「ドライブスルー活況」にほくそ笑むのは誰か?

2011.02.02

営業・マーケティング

「ドライブスルー活況」にほくそ笑むのは誰か?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 日本経済新聞の記事によると、ドライブスルーが活況であるという。ドライブスルーといえば誰もが思い浮かぶマクドナルドだけでなく、カレーのCoCo壱番屋や、長崎ちゃんぽんリンガーハットなどの意外な存在も名を連ねている。

 「機会費用」という考え方をすると、デリバリーにはドライブスルー同等かそれ以上のメリットがデリバリーにあることがわかる。
 機会費用とは「ある行為を選択しなかったら、得られたであろう利益」のことをいう。よく「大学に進学した場合、就学せずに就職したら得られる4年間の給与が“機会費用”である」と説明される。4年間分の入学金と授業料なのどの「目に見える費用(会計的費用)」
とは別に「目に見えない費用(経済学上の費用)」が発生しているということだ。
 ドライブスルーで食事を購入して家に帰ってくる。目に見える費用は「ガソリン代」ということになるだろう。では、目に見えない費用は何か。それは「余暇時間」だ。余暇時間をいくらと見るかだが、景気が上向いてきたとされる昨今、労働時間が長くなれば余暇時間の対価は向上していく。

 家で普通に食べるには食事を作る手間がかかる。外食すると周囲に気を遣う。故に、ドライブスルーを利用して家で食べる利用者の「ニーズ」は何かといえば、マクロミルの調査結果にあるように「外食メニューを家でくつろいで食べること」である。その実現のための具体的なサービス=「ウォンツ」が「ドライブスルー」なのである。
 「ニーズ」を充足するための「ウォンツ」として代替的な存在が「デリバリー」だ。デリバリーの利用は、ドライブスルー利用のための目に見える費用を支出して、目に見えない費用の削減(時間の消費を削減)を実現してくれる。

 従来の「出前」ではなく、ワンウェイで食事を宅配するデリバリーは、従来のピザだけではなく、弁当、寿司、中華など様々な業種が参入し、若干メニュー価格が割高なのにも関わらず活況を呈している。
その中でも3,700もの店舗のうち、どこからデリバリーサービスを展開しようかと狙い研ぎ澄ましている企業がある。日本マクドナルドだ。
 現在、東京・世田谷の用賀インター店1店舗で合計1,500円以上注文すればデリバリー費用を無料とする消費者の受容性テストしている。テスト終了後はメニューに転嫁するか、宅配料を別途徴収するかの検討中である旨を既に表明している。また、実験当初は職域からの注文が多かったというが、家庭からの注文を増やすべく告知強化をしているともいう。

 1つの商品、サービスが流行っているという現象を前にした時、消費者の真のニーズは何かを考え、代替できるウォンツとしてビジネスチャンスを見つけることはできないかを考えることが肝要だ。その事例としても、ドライブスルーとデリバリーの利用状況や各社の展開を今後ウォッチしてみたい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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