街の人の視線

2011.01.28

ライフ・ソーシャル

街の人の視線

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

~続々・雑誌「BIG ISSUE」の売り子にもらったもの~

 「ビッグイシュー(BIG ISSUE)」は、ホームレスの自立支援という目的のために作られている雑誌だ。1冊300円を売って、ホームレスは160円の収益を得る。簡易宿泊所の代金などを得て路上生活からの脱出を図るのだ。
http://www.bigissue.jp/about/index.html

 ある「BIG ISSUE」の売り子と顔見知りになったのは、昨年の11月のこと。彼とのちょっとしたふれあい、心の交流のようなものをつづって今回が3回目になる。連載化しようと意図したのではない。彼の態度や言葉から、いつも何か忘れかけている、忘れている大切なものをもらったような気がして、それを書きとめているつもりなのだ。

 <バックナンバー>
 ・「雑誌「BIG ISSUE」の売り子にもらったもの」
 ・人の好意にどう応えるか?~続・雑誌「BIG ISSUE」の売り子にもらったもの~

 月2回発行される「BIG ISSUE」。1月の2号目の発売日からだいぶたったある日の夕方、いつもの駅前で雑誌を左手で高く掲げ、販売のアピールをした彼の姿を見つけた。
 久しぶりだった。発売日には欠かさず駅前に立つ彼の姿がここしばらく見えなかったのだ。

 私が彼を見つける以前に、彼はこちらに気がついていたようだ。遠くでニコッと笑顔をみせている。
 近づいてみると、もともと小柄な彼の姿が一回り小さくなったように感じた。
 雑誌代を手渡す前に、珍しく彼から話しかけてきた。
 「いや~、ついに風邪で寝込んじゃいましたよ・・・」
 インフルエンザではなかったというが、一時は体温が39度近くになり、都合10日間は寝込んだという。

 「ちょうど新刊が出る前後だったんで、何とかしようと思ったんですが、無理をすると死んでしまうんで・・・」

 日常的に「死ぬ」という言葉は比ゆ的によく使う。「仕事が多すぎて、もう死にそう」とか。
 しかし、彼の日常で「死ぬ」は、文字通り「死ぬ」なのだ。ほんの少しの差で、死が隣にあるある暮らしをしている。

 「保険証を持ってないんで、こじらす前に休む。なけなしの金をはたいて、薬局で薬を買って、とにかく寝る。本当は医者の薬、抗生物質があれば一発で治るんでしょうが、そういうわけにもいかないんで、とにかく手に入る薬を飲んで寝て治す。これしかないんですよ。で、10日もすると、たいがい手元の金も、食べるものもなくなって、それ以上休むと首をつらなきゃならないようになる頃、治るんです」。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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