今回は、「評価会議」にスポットを当てて考察し、5つの観点でお話させて頂きます。
3.全員が評価者の共通の部下であると思ってする評価会議の意味
前項で、評価会議は単に評価点の甘辛の調整と評価を決めるための会議というだけでなく「育成会議」という認識で臨む必要性を述べましたが、その際に大事なことは、「俎上に上る被評価者を、会議に出席する評価者全員の共通の部下である」という認識と態度で臨むことです。分かりにくい言い回しになっていますが、一人の出席者から見ると、すり合わせの対象になる全員を「自分の部下だと思って」臨んでくださいよ、ということです。これには二つの意味があるんですね。一つには、自分の部下のことだけ考えてセクショナリズムに陥ると、勝負の世界になって、お互いの足の引っ張り合い、揚げ足取りの様相を呈してくるということ。直属でないとしても、日頃知りうる限りの情報を駆使して、育成の観点で意見を言うことが、本人の成長のために最もありがたいことのはずだからです。もう一つは、これは長い目で見て絶大な意味を持ってくることなのですが、配置換えを想定した時に、管理職が常に全員について理解していると、上司が入れ替わったとしてもある程度のレベルで理解した状態から関係構築を始めることができるということです。
4.GOOD & MOREを整理・共有していくことで前進することができる。
一部前述のことと重複するのですが、評価会議の席は、どうしても問題点の指摘のし合いで、自分の部下以外の対象者の評価を厳しくしていくことに注力しがちになっていきます。その空気が全体を支配していくと、チーム全体として未来に向かって前進していくムードにならない、やればやるほど憂鬱になる会議になってしまうのです。
一人ひとりの評価点の根拠の説明際しては、漠然とコメントするのではなく、その評価期間における一人ひとりの「GOOD & MORE」を発表し共有することです。GOODとはその間における「彼の取組みでよかった内容、よかった取組み姿勢などを具体的に整理する」こと。MOERとは「この取組みの“ここをこうすればさらによい結果が出たのでは”ということや“これこれこういうことができるようになっていれば、さらによかった”という点を整理する」こと。これはやってみると分かりますが、「課題指摘型」に比べて絶大に組織を前進させる力が場内に湧いてくるものです。
5.粘り強く演出していく責任者の存在が重要
人間の「慣れ」というものは誠に恐ろしいものです。どんなに素晴らしい評価会議をしていても、回を重ね、繰り返しの段階に入ってくると徐々にマンネリ化してくることは避けられません。最も多い失敗のパターンは、マンネリによって少しずつ乱暴になっていく評価内容や、少しずつ安易になっていくお互いのコメントに気がついていながら、修復できずに、徐々に徐々に停滞し、最悪の場合は開催されなくなってしまうというケースに陥ってしまうのです。これを防ぐ方法は一つしかありません。粘り強く演出しやり続けていく責任者の存在です。マングローブのお客様のA社では、人事制度を改定し新導入してから8年目に入っていても、微動だにせず、誠に丁寧な評価会議を開催され、毎回毎回運営方法を改善していかれています。これはひとえに、本部の開催責任者の方の努力の賜物です。この方の粘り強さは尋常ではありません。評価者の評価内容の説明が少しでも曖昧になってくると、導入当初の新鮮さと変わらない鋭さで質問を浴びせかけていかれます。「それは具体的にはどんな事実があったの?」「前回から今回にかけて、変化したことをもっと具体的に把握しておいてもらわないと困る」等々。いい評価会議を続けていくためには、粘り強く演出していく人事責任者の存在が必要であることの手本となるお客様です。粘り強さの源泉は何かと言いますと、「この人事制度の運用の成功こそが、社員一人ひとりを成長させ、業績につながる行動に変えていく最大の方法なのだ」という信念と使命感なのですね。
5つの観点を提示させていただきました。この機会に、自社の評価会議のあり方を再度考え直してみていただきたいと思います。
株式会社マングローブ
今野 誠一
毎日ブログ更新中
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今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。
