仕事とは「IN→THRU→OUT」の価値創造である

2011.01.04

仕事術

仕事とは「IN→THRU→OUT」の価値創造である

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

仕事とは端的に、「何かをINPUT〈入力〉し、THRUPUT〈処理・加工〉し、何かをOUTPUT〈出力〉する価値創造である」と言える。そこからきょうは「仕事・よい仕事」とは何かについて考える。

 この世界は、無数の個々が無限様に成す「IN→THRU→OUT」の価値創造連鎖による壮大な織りものである。―――こう考えたとき、この壮大な織りものをつくる一紡ぎ、一織りは、まさしく私たち一人一人が成す一つ一つの仕事にほかならない。
 何か良書に触れてその一文を企画書に盛り込む。そしてそれを読んだチームが建設的なアイデアにたどり着き、それを実行する。そんな日頃の些細な「正の価値創造連鎖」がこの世界を織り成している。
 と同時に、メディアに流れる悲観的な分析・冷笑的な意見に影響され、自分もまた悲観・冷笑的な発言を周囲にしてしまう。すると周囲も悲観・冷笑的な気分になる。そんな日頃の些細な「負の価値創造連鎖」がこの世界を織り上げてもいるのだ。

 「この世の中は自分一人が変えるには大き過ぎる」と誰しも思う。しかし、この世の中は、結局のところ、一人の人間の些細な「IN→THRU→OUT」の価値創造によってつくられている。これは厳然たる事実として認識してよいものだ。

◆「よい仕事」の思想~仕事の中の祈り
 西岡常一さんは1300年ぶりといわれる法隆寺の昭和の大修理を取り仕切った宮大工の棟梁である。彼は言う―――

 「五重塔の軒を見られたらわかりますけど、きちんと天に向かって一直線になっていますのや。千三百年たってもその姿に乱れがないんです。おんぼろになって建っているというんやないんですからな。しかもこれらの千年を過ぎた木がまだ生きているんです。塔の瓦をはずして下の土を除きますと、しだいに屋根の反りが戻ってきますし、鉋をかければ今でも品のいい檜の香りがしますのや。これが檜の命の長さです。こうした木ですから、この寿命をまっとうするだけ生かすのが大工の役目ですわ。千年の木やったら、少なくとも千年生きるようにせな、木に申し訳がたちませんわ。 ……生きてきただけの耐用年数に木を生かして使うというのは、自然に対する人間の当然の義務でっせ」。―――『木のいのち木のこころ 天』より

 また、もう一人、染織作家で人間国宝の志村ふくみさんを紹介したい。淡いピンクの桜色を布地に染めたいときに、桜の木の皮をはいで樹液を採るのだが、春の時期のいよいよ花を咲かせようとするタイミングの桜の木でないと、あのピンク色は出ないのだと彼女は言う。秋のころの桜の木ではダメらしい。

 ―――「その植物のもっている生命の、まあいいましたら出自、生まれてくるところですね。桜の花ですとやはり花の咲く前に、花びらにいく色を木が蓄えてもっていた、その時期に切って染めれば色が出る。……結局、花へいくいのちを私がいただいている、であったら裂(きれ)の中に花と同じようなものが咲かなければ、いただいたということのあかしが、、、。自然の恵みをだれがいただくかといえば、ほんとうは花が咲くのが自然なのに、私がいただくんだから、やはり私の中で裂の中で桜が咲いてほしい、っていうような気持ちが、しぜんに湧いてきたんですね」。―――梅原猛対談集『芸術の世界 上』より

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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