2011年、「異種格闘技戦」をどう生き抜くか?

2010.12.28

営業・マーケティング

2011年、「異種格闘技戦」をどう生き抜くか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 日経MJに「予期せぬライバルは国境を超え、業種、業態の垣根を越えてやってくる」と、昨今の市場環境の潮流に言及したコラムが掲載された。来年はさらにそれが強まるだろうという論調だ。では、「どう生き抜けば、勝ち抜けばいいのか」が問題だ。

 コラムは同紙・編集委員の連載「底流を読む」だ。12月27日付のタイトルは「市場は“異種格闘技”に」。サブタイトルが「敵は垣根を越えてやってくる」である。

 1つめの事例として、垣根を超えてきた敵、グリーやDeNAなどのソーシャルゲームやiPhoneなどのスマートフォンに攻撃された、任天堂が挙げられている。2010年4月~9月期の連結決算は最終赤字20億円。<11年3月期も売上高が1兆1000億円、経常利益が1450億円となる見込みで、それぞれピークだった09年3月期の6割、3割の水準>だという。
 任天堂の失速は、環境分析的にいえばマクロ環境分析(PEST:Political・Economical・Social・Technological)のTechnological(技術的成熟度の影響要因)にあたる。
 影響を及ぼす要因は、各々発生確率と予想の難易度、速度、防御の難易度が異なることに注意が必要だ。リーマン・ショックに端を発した経済危機は、「100年に一度」といわれる発生確率で予測も難しい。Economical(経済環境の影響要因)は不可避で劇的な変化を市場にもたらす。一方、日本の人口縮小はとっくの昔にわかっていたように、Social(社会環境の影響要因)はジワジワと変化する。対応は比較的しやすい。Political(政治と規制事項の影響要因)は、関連法規が変わると業界環境が劇的に変化してしまう。薬事法の規制緩和でセルフ販売が自由化され伸びたドラッグストアが、一層の規制緩和で大手流通の参入によって業界再編になっている例がそれにあたる。但し、法令は一朝一夕には作られないので、対応ができないわけではない。では、問題のTechnologicalはどうか。突然、特許を取られ技術が囲い込まれたり、新技術が開発されて既存技術が陳腐化したりということはある。しかし、その技術が商品化され市場で普及するには時間がかかる。市場の技術動向を見据えつつ、普及までの時間をどう使うかがキモだ。ちなみに、iPhoneは先端技術をほとんど使っていないので、任天堂対アップルをその観点で見れば、アップルのマーケティングの勝利といえるだろう。

 コラムの2つめの事例は日本マクドナルドのコーヒー販売の拡大だ。<約3300店に及ぶ店舗網とハンバーガー類の収益を原資に低価格コーヒーを提供、専業店を利用する顧客を奪取>とある。<今12月期の販売量見込みは3億3000万杯>と、<専業店大手を1億杯ほど上回る>という勢いを見せている。
 この事例は「業態の垣根越え」にあたる。そもそも、マクドナルドはどのような業態で戦っているのか。ドメイン(戦いの土俵)を考えてみよう。最も狭いドメインで考えれば、自ら「ハンバーガーレストラン」と称している業態だ。競合はハンバーガーチェーン各社。しかし、マクドナルドは小さな業界のリーダーに治まるつもりはなく、ドメインを拡大している。競合を和洋、ファミレス、そしてケータリングなどにまで拡大し、「1000円以内のカジュアルな外食を提供する事業」と考えているという。市場規模は8兆円だ。
 「垣根越え」で巨大な力を持った企業に押し潰されないためには、近隣業態のプレイヤーの動向をよく観察しておくことが欠かせない。マクドナルドは評判の悪かったコーヒーをプレミアムコーヒーに変えた。しかし、その前から新業態・新店舗の「マックカフェ」を展開しては撤退するという経験を2度している。その時点で、カフェ業態への本格進出を考えていたことが伺えるのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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