「はみ出す」ロッテリアは何を目指しているのか?

2010.11.30

営業・マーケティング

「はみ出す」ロッテリアは何を目指しているのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 バンズから大きくはみ出したパティ代わりの肉が大迫力を醸し出す、ロッテリアの『はみだしステーキバーガー』。いい肉(1129)の日である11月29日に期間限定で発売が開始された。一体、何を目指しているのだろう。

 ガッツリと美味しさ。と、くれば、もう一つの方向性は「財布にやさしい安さ」だ。それに応えるのが「うまいやすいメニュー」。ハンバーガーや唐揚げ、アップルパイ、ドリンクなどが100円で提供され、マクドナルドの100円、120円メニューにも負けていない。

 ハンバーガー業界のリーダー企業といえば、無敵の「コストリーダー戦略」をとる「日本マクドナルド」だ。ハンバーガー業界だけでなく、ケンタッキー・フライド・チキンにも戦端を開く「チキン戦争」を開始するなど、有り余る力で他を圧倒する。そんなリーダー企業に対抗するのは、「オーダーを受けてから作る」というコンセプトを堅持する、「差別化戦略」で戦うモスバーガーだ。店舗数で見れば、マクドナルドは2010年2月時点で3,686。モスが10月末で1,363。3倍近い開きがある。では、ロッテリアはといえば、2月時点で524と、モスに比べても半分以下の数しかない。
 リーダーにはなれず、対抗する力もない場合、「集中戦略」で特定の市場に集中するニッチャーのポジションを取る。独自の生存領域を確保するのだ。例えば、ハワイ生まれの「クア・アイナ」はハワイに2店舗、国内に15店舗展開し、「高級バーガー」という独自路線で根強いファン層を獲得している。

 ロッテリアのポジションはその意味では非常に微妙だ。
 1987年にマクドナルドがバーガー・ポテト・ドリンクをセットにして390円という「サンキューセット」を展開したことに対抗して、380円の「サンパチトリオ」をぶつけた。マクドナルドは翌年に360円の「サブロクセット」で応戦するなど、今日の「牛丼戦争」のような様相を見せていた。結果としては、低価格路線はロッテリアにとって、その後の新メニュー展開の失敗とあわせて経営を大きく圧迫していくことになったのである。
 チャレンジャーにも、ニッチャーにもなれない存在は、「フォロアー」となる。リーダー企業の陰に隠れて、積極的にコミュニケーション投資はしない。リーダーよりも一段価格を安く設定し、リーダー企業の築いた市場の、いわば「おこぼれ」を拾う。そんな存在となってしまう。
 だが、ロッテリアの展開は明らかにそれとは違う。勝負に出ている。だが、「量・味・価格」の3つの方向性全てを訴求しようという、いわば「全方位戦略」はリーダーの戦略であり、体力に劣るロッテリアが本来取り得る戦略ではないはずなのだ。そこが「微妙」と前述した理由だ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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