隣の芝生は青かったか?再入社した社員が学んだこと

2010.11.19

経営・マネジメント

隣の芝生は青かったか?再入社した社員が学んだこと

喜田 真弓

企業向けコンピュータソフトを販売するアシストは、社長がビル・トッテンという元アメリカ人(2006年、日本へ帰化)であるために、一見“外資系”のように思われるかもしれない。しかし純粋な日本企業であり、社長みずからが「日本式経営」、つまり戦後の日本で多く見られた終身雇用制度による愛社精神の醸造を企業の安定の要だと喧伝してはばからない会社だ。

「辞めて半年しかたっていなかったが、“アシストに戻って、また営業と技術とアシスタントというチームで働きたい、仕事はお金だけじゃないことがわかった”、という古市の目がキラキラしていて、あ、こいつ変わったな、と思った」と坂本。実は坂本は、古市以外にも2人の社員を再入社させている。「もちろん単なる職探しの一つとしての再入社は認めない。でも相談を受けて会って話をしていると本気で戻りたいのかどうかはすぐにわかる」。

古市の中で、何が、どうか変わったのだろうか。
「率直に言って年収2倍という言葉につられ、お金という価値観が勝って転職したけど、辞める前も僕は誠実に仕事をしてきたと思う。でも、新卒で入社してアシストしか知らなかったから、外の世界を、短い間だったけど経験してこの会社の良さがほんとに、心から、わかった」

坂本は復帰した古市に、あえて辞める前と同じ顧客企業を担当させた。それは同じお客様へ純粋な営業職として向き合えるかを確認したかったからだという。2007年、その企業で大きなシステム案件があり、古市の提案が採用されたが、以後お客様の状況が変わり先送りになった。だが古市はその後もお客様の課題解決に対応できるよう継続して訪問した。

最初の提案から2年後の2008年、その大型案件に再度、古市の提案が採用された。「辞める前の古市だったら、案件が流れた時点であきらめて、愚痴っていたと思う。でも彼はお客様の声に素直に耳を傾けることを続けた。大型システムだったのでカットオーバーまで連日徹夜の嵐だったが、もちろん技術だけでなく、何もできなくても古市も一緒に客先に張り付いていた。お客様を大事にするという思いがそうさせたと感じた」と坂本。結果として古市はその年アシストの営業成績NO.1として表彰された。

「一度辞めたくせに戻ってきて、調子のいいやつ、と思われることは覚悟しての再入社だったから、とにかく売上を上げて、結果を出そうと思った。再び入社を認めてくれた会社に恩返しをし、後悔させないためには、またその決断をした自分自身に対しても、それしか証明する方法はないと思った」。

再入社して6年半。古市はいま再びアシストでチームのリーダーとして後輩を指導する立場についている。部下が辞めたい、といったらどんな助言をするか。「自分の体験を話すけど、止めないと思う。自分がそうだったように、経験しないとわからないことはたくさんあるから」

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