チキン戦争:ケンタッキーは「集中戦略」で逃げ切れるか?

2010.11.12

営業・マーケティング

チキン戦争:ケンタッキーは「集中戦略」で逃げ切れるか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 今年の夏の訪れと共に勃発した、マクドナルド対ケンタッキー・フライド・チキンの「チキン戦争」。猛暑を通り越した激暑だったこの夏の暑ささながらに、マクドナルドが激しい攻撃を仕掛けるも、ほぼ静観を決めていたケンタッキーに動きが見えてきた。果たして戦いの行方やいかに?

 マクドナルドの顧客層は種々雑多だ。オモチャ付きのハッピーセットやDSのゲーム配信など、こどもを連れたファミリーを中心に据えつつも、都市部ではお一人様席を充実させたり、次世代店舗では若年層を意識したり、一方で1971年以来開業39年の歴史から、顧客にはマクドナルドに慣れ親しんだ中高年も多い。
 リーダー企業の戦略は「全方位戦略」が基本だ。特定ターゲットに集中して「捨てる」ことはしないはずだ。捨てて規模を失えば、コストリーダーでなくなる。そこに、ケンタッキーの付け入るスキが出てくる。
 コストリーダーシップ戦略におけるリスクは、特定のセグメントが成長して、市場全体の規模に影響を及ぼすようになることだ。ケンタッキーが狙い通り揚げないチキン・ヘルシーメニューの魅力で20~30代の女性を取り込み、利用率、利用頻度を高めていき囲い込みを図る。そして、マクドナルドのチキン利用者全体からその層をスッポリ奪い取るようになれば、ケンタッキーがマクドナルドのチキン制覇を阻んだことになる。

 一方、リーダーの戦略の定石は「同質化」だ。チャレンジャーが開発・上市してヒットし始めた商品をスピードに勝る開発力を活かして迅速に模倣。強大な販売力であっという間に市場を席巻して競争力を削ぐのである。
 「揚げないチキン」のため、ケンタッキーは専用のオーブンを用意して調理しているという。新型店舗の全国店舗 展開がゆっくりなのは、フロアの改装だけでなく、既存の厨房にオーブンを入れるスペースを確保するなどの改造がハードルになっているのではないかと思われる。とはいえ、マクドナルドが本気を出して、オーブン付き厨房完備の次世代店舗を展開し、そこで「揚げないチキン」を出すかもしれない。それだけの意気込みと、資本力はマクドナルドにはあるのだ。

 勝負の行方はまだ見えない。本格的な戦いのゴングは、まだ鳴ったばかりだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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