2つのフレームワークで見る「クリーニング業界」のこれから

2010.10.18

営業・マーケティング

2つのフレームワークで見る「クリーニング業界」のこれから

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 市場環境を分析する際に、何のフレームワークを用いればよいか悩むことがあるだろう。筆者のオススメとしては、まずは自分の得意なフレームワークで一度分析してみることだ。その結果、よくわからなかった所があれば、最も適したフレームワークを判断してもう一度分析をしてみるといい。 昨今、変化が激しい「クリーニング業界」を例に考えてみよう。

 Socialの要素は「業界内の競争」に影響を与えた、業界紙のタイトルにもある「後継者がいない変わる業界構造」は、そもそ、少子高齢化に起因している。人口減少傾向に歯止めはかからないことはわかっている。後継者だけではなく、顧客も減少する。特に、団塊の世代がまもなく完全リタイアする。クリーニング不要な服装に変わっていくことも想像に難くない。前述のように、ファストファッションの隆盛は増すばかり。2005年に始められた「クールビズ」以降、カジュアル化も進む一方だ。

 Technologicalの要素は、「5つの力分析」で述べたとおりだが、「高機能の洗濯機やアイロン」「形状記憶シャツ」だけでなく、他にも洗濯機でクリーニング同様に仕上げられる洗剤・柔軟剤や、ワイシャツどころかスーツにまで過程で丸洗いできる製品が登場している。そうした製品はさらに登場し、普及していくだろう。

 「PEST分析」の結果を「5つの力分析」に重ねてみれば、クリーニング業界は、より厳しい環境にあり、その苦境の根は深く、この先も中・長期的に回復する要素が見られないということになる。
 大切なのは、上記のように一つのフレームワークで簡単に結論を出してしまうのではなく、必要に応じて複数のフレームワークでその特性を活かしながら多面的に結論を導き出すことである。しかし、それよりも大切なのは、「では、どうする?」という「結論」を出す姿勢だ。

 しかしながら、今回の「クリーニング業界を今後どうするか?」はいかにも難しい。
 正直なところ、筆者は価格競争を演じている大手クリーニング業者の今後のシナリオは描く自信はない。価格はもはや下げようがないところまできている。その状況下で価値・付加価値を上げることの難しさだ。
 一方、「大切な衣料をメンテナンスするために、高額なクリーニング代も厭わない」という層も存在する。例えば、「三越日本橋本店・暮らしのサロン」のクリーニングサービス。溶剤を用いない「ウォータークリーニング」による仕上げは、「スーツ 税込6,300円から、ダウンジャケット 税込6,300円から、ジャケット 税込4,275円から」。広く一般に受入れられる価格ではないが、「ニッチャー」のポジションを確立することも生き残り方法の一つだ。前掲の「全国ドライクリーニング新聞社」の記事にも<個人経営の今後の活路として、「専門店化・高級店化」>があるという。

 別の考え方もある。米国生まれの「Wash and Fold Service」。シャツなどだけでなく、下着、靴下やシーツまでを「洗ってたたむ」という衣類メンテナンスというより、家事の基本を提供するのだ。日本でも提供企業が登場している。提供価値の軸を変えてみることも解決の手段である。

 今回は「クリーニング業界」を題材に「5つの力」と「PEST」のフレームワークを用いて分析を行った。「モレ抜けなく分析すること」と「意味合いを出すこと」の例となれば幸いだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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