戦略転換は進化か不毛か。アパレル小売の栄衰を象徴する2社

2010.10.04

経営・マネジメント

戦略転換は進化か不毛か。アパレル小売の栄衰を象徴する2社

猪口 真
株式会社パトス 代表取締役

再三のNB化への転換で利益増をもくろむライトオン、それに対し、「餅は餅屋」と仕入れに徹底し、SPAとの差別化を測るしまむら。この両社の違いは何を物語る?

こうした話題を聞くたびに、事業運営の基本的な2つのことを考えてしまう。

そのひとつは、顧客への貢献が見えない戦略転換にはまったく意味がないということ。
ライトオン社内には、我々の計り知れない戦略転換に走らざるを得ない、やむにやまれぬ事情がきっとあるのだろう。しかし、SPA化を進めるがあまり、ニーズの細分化に対応できなくなったり、少品種大量生産ゆえの在庫過多になったりという流れは容易に想像つく。さらに、発表された次年度の戦略には、具体的な顧客貢献の内容は見えてこない。またその話かと思うのは私だけではあるまい。自社側の都合のみによる戦略転換がいかに不毛かということだ。

しかもこれはアパレル小売だけの世界ではない。メーカーにも通じる話だ。SPA化とNB化の間をいったりきたりするのは、メーカーからすれば開発での内製化とアウトソーシングの戦略転換、販売における代理店戦略とダイレクトセールスの戦略選択に通じるものがあるだろう。そこに顧客貢献の視点がない限り、こうした戦略転換がうまくいくことはない。

2つめは、どのような企業でも全体ネットワークとしてのバリューチェーンをうまく活用することなしに事業成功の道はないということ。
極端な垂直統合型のネットワークを作り上げ、スタンダードにしてしまった企業もなくはないが、数年に1社出るかどうかの確率でしかなく、大半の企業は、全体バリューチェーンの中で存在している。
結局は、自分自身の身の程を知り、(自分たちの得意なこと)徹底的なサービスを地道に行う以外に業績向上の道は少ないということだ。

自社が関わる商流の中で、他社の領域が魅力的に映るのは無理のないことかもしれないが、戦略転換スピードと業態変化がもてはやされる時代にあっても、一貫性を守りとおさなければならないことも多い。

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