「ペプシモンブラン」は不味いはず?:好例の変わり種・味予測

2010.09.22

営業・マーケティング

「ペプシモンブラン」は不味いはず?:好例の変わり種・味予測

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 猛暑がようやく落ち着く気配を見せ、秋の味の話題もちらほら聞こえてきた。そして、季節の味覚の如く恒例ともなっている、毎年1~2回発売される変わり種ペプシ。この秋の新作は「栗」がテーマだ。

 ペプシの最大のライバルといえば、コカ・コーラだ。会社規模で考えれば、総合食品企業のペプシコは、コカ・コーラより遙かに規模が大きい。また、世界各各地の飲料市場でも、地域によってはペプシがコカ・コーラを上回るシェアを確保している例もある。しかし、日本市場では、ペプシを擁するサントリーは飲料業界第2位。第1位が日本コカ・コーラだ。両社の飲料全体でのシェアはサントリーが20%なのに対し、日本コカ・コーラが30%以上と、サントリーは大きな差を開けられている。両者の戦力の違いで大きいのは、自販機の保有台数である。日本コカ・コーラが、飲料販売の約4割を占める全国約240万台の自動販売機のうち、80万~90万台保有するのに対し、サントリーは44万台と劣勢なのだ。自販機での販売に劣るサントリーが注力するのは、昨今、自販機以上に重要な販売チャネルであるコンビニだ。自販機の飲料販売シェアはかつての50%から現在は35%まで低下している。それを奪っているのがコンビニなのだ。自販機は自社の都合で商品をラインナップできるのに対し、コンビニの棚を確保するには、チェーンの本部・マーチャンダイザー(MD)とフランチャイズオーナーが、「扱おう」という気にならなければならない。そして、その意志決定を大きく左右するのが商品の「話題性」なのである。

 変わり種ペプシの狙いは、その話題性喚起を、マス広告などを全く用いずに口コミで伝播させることにある。昨夜発表された「ペプシモンブラン」の話題は、既にいくつもBlogやSNS、Twitterに記載されている。この記事もその一つになる。話題性を喚起して、変わり種ペプシをコンビニの棚に並ばせる。多くの店は、その限定期間中、ペプシのNEXなどのレギュラー商品も棚のフェイス数を増やす。それこそが、狙いなのである。
 コカ・コーラに対するペプシ。日本コカ・コーラに対するサントリー。その構図はリーダー対チャレンジャーである。強大な力を持ち、全方位で戦うリーダーに対し、チャレンジャーは徹底して差別化を図る。リーダーがやらないこと、できないことを展開するのである。

 「スカッとさわやかコカ・コーラ」というキャッチコピーは実は登録商標されている。それだけに、「さわやかさ」はコカ・コーラにおいて重要なブランド資産なのである。故に、「変わり種コカ・コーラ」は絶対に発売しない。そこでチャレンジャーであるペプシが差別化をかけるのだ。
 それ故に、本来、変わり種ペプシは「さわやか」だったり「美味しい」だったりしてはいけないのである。「ビミョー」だったり、「不味い!」だったりすることが、差別化のキモなのだ。衝撃のキューカンバーの不味さで大成功し、ブルーハワイでそれを継承。ホワイトとしそでは、ビミョー程度にトーンダウンしたが、あずきで美味しくなりだして、バオバブでついに美味しさが完成してしまった。これはいけない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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