伝える・人を動かす:身元の分かる被害者効果からの考察

2010.09.21

営業・マーケティング

伝える・人を動かす:身元の分かる被害者効果からの考察

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 9月17日にWIRED VISIONに非常に示唆に富んだ記事が掲載された。  <統計よりも「1人のストーリー」が有効な理由>

 「身元の分かる被害者効果」のような不合理性は、消費者行動の底流であると考えた方がいいだろう。もとより、我々は不合理な存在であり、非合理的な感情に支配された生き物なのであるのだと。
 消費者自身にとっては、「経済的な合理性」とは、一つの判断基準でしかない。その合理性が正しく判断できているとしてもだ。経済性以上の合理性が、その人の中に成立するのであれば、それが優先される。そして、その際の重要な要素が「自らが関与するにたり得る“関係性”が感じられるのか。その“背景情報”が存在するのか」である。

 統計的な情報ではなく、報道ではなく、消費者に何らかの行動を起こさせるためのメッセージ発信においては、commitment(関与)が得られる対象としてのポジションを獲得すること。そのための「背景情報」も併せて発信していくことなどが欠かせない。成功しているブランドほど、その歴史や背景がファンにきちんと伝わっている。ファンは積極的にそのブランドの「一部」たらんと、積極的な関与=購買行動を取る。謎めき、崇拝を集めるセレブレティーも存在するが、人々から愛されるセレブほど、生い立ちや人となりがファンに共有されている。つまり、commitment(関与)によって、「あなた」と「私」の関係に留まらず、「我々」の関係に昇華しているのである。

 記事では、二つのことを結論としている。一つは、<人間の感情は、そのような(大きな)規模の苦しみを理解できないかもしれない。それでも、苦しみが続くことに変わりはないのだ>と、「情報の受取手」として、情報処理能力と感性の両面を磨くことを訴えている。これは個々に留意したいところだ。
 もう一つが、「伝える側」は、パキスタンの洪水被害にあるような<災害の規模の大きさばかりを取り上げ、個人レベルの悲劇を伝えなかったことにある>というような過ちを犯さないことである。繰り返すが、人は経済的な合理性だけで動くわけではなく、「合理性」というものも絶対性はない。人を動かすためには、または、求める理解を促すためには、表面的な事実、客観情報だけではだめなのだ。人に関与を促す背景情報などの機微に踏み込むことも必要なのであると肝に銘じたい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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