吉野家「牛鍋丼」試食レポート

2010.09.08

営業・マーケティング

吉野家「牛鍋丼」試食レポート

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 本日、9月7日10時より全国発売が開始された、吉野家「牛鍋丼」。自社顧客の競合流出防止と、競合顧客吸引という、まさに社運をかけた新メニュー。人気の牛豚丼、豚生姜焼き定食などの豚メニューも販売を停止して「牛」にかける意気込みを見せている。果たしてその実力はいかほどか?

 試食をしてみると、「牛鍋丼」は松屋の「牛めし」の定価である320円に対し、280円という価格なら、十分対抗できるのではないかと思えた。今回、すき家の店舗が新橋になかったので同時には試食できなかったが(店舗があっても筆者一人で4杯の試食は無理)、その280円という価格に対しても、味の好みで分かれるだけで、対抗は可能ではないかと思う。
吉野家の戦略の一つは、「自社客流出防止」だ。「もっと肉を多く」とか「とにかく味噌汁付きでなければイヤだ」という顧客以外には対応できるのではないだろうか。
 もう一つの狙いが「他社客吸引」である。それに関しては、この牛鍋丼の話題性があるうちは、「一度は食べてみよう」と集客することは可能であるし、味の評価も獲得できるだろう。しかし、牛鍋丼を支持して、これを食べるために通うというほどのインパクトはないだろう。何より、競合には牛丼のバリエーションや、丼以外の豊富なメニューがある。

 改めて食べ比べてみると、本論の「牛鍋丼」の味の評価以上に、「吉野家の牛丼のおいしさ」が際立つ結果になったように思う。そして、吉野家が「肉質」にこだわり、某庶民派経済評論家をはじめとする、吉野家のコアなファンがそれを支持する理由もわかる。だとすれば、吉野家復活の糸口は、牛鍋丼で他社客を吸引し、速やかに牛丼にスイッチさせることではないか。それも、今回、筆者が試食した牛丼のように、定価を前提に品質を維持・向上させて提供するようなオペレーションを実現する。そうすることによって、「やはり、牛丼といえば吉野家」というポジションを奪取するのだ。

 まずは、「牛鍋丼」によって、「一人負け」といわれた状態から反撃する材料は一つ用意できたように思う。しかし、メニュー一つで戦況が逆転するほど、牛丼戦争は甘い状態にはないのは確かだ。二の矢三の矢をどう用意するのか。それ以上に、大きな戦略の絵図をどう描くのか。今後に注目したい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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