INAXとTOTOのCM対決から見えてくるもの

2010.09.07

営業・マーケティング

INAXとTOTOのCM対決から見えてくるもの

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ふと、テレビを見ているとINAXとTOTOが印象的なCMを放映していた。両社の狙いはどこにあるのか?

 INAX(株式会社イナックス)とTOTO(トートー株式会社)は、かつては共に日本の陶磁器の売上高上位企業を独占していた森村グループに属していた企業であったが、2001年にはINAXがトステムと経営統合し、今日では強力なライバルの関係にある。両社は陶磁器の中でもトイレ、洗面器などの「衛生陶器」を主たる製品とし、その領域ではTOTOがシェア6割と日本№1の座に君臨している。また、同社はトイレにおいてはウォッシュレットを開発したほか、ユニットバスを初めて開発するなど、優れた新製品開発力を誇っている。一方、INAXも上海万博の日本産業館で「世界一トイレ」を展示して、高品質のアピールを行う一方、旧森村グループでタイル製造をしていた経緯から、独自の内装用建材の生産や、トステムと共同生産でユニットバスの20%のトップシェアを占めるなどTOTOを猛追している。

 INAXがTVで流しているのは、同社シャワートイレ製品のサービスサポートに関するものだ。
 <自主製品保守推進制度「INAX NEXT プログラム」について>
 http://www.inax.co.jp/aftersupport/safety/nextprogram/
 TVCMご紹介・SATIS「夜明け篇」30秒

 同商品には約10年経過すると「お知らせ表示」が点滅を始めるという。「長く安心してお使い頂くために」とアナウンス。「INAXでございます」とコールセンターのオペレーターの映像で、サービス品質を訴求する。キャッチコピーは「ロング・バリューという新しい価値」とある。
 INAXは「シャワートイレ」と称しているが、そもそもはTOTOが「ウォッシュレット」という商標で売り出し、1980年にちょっと不思議な女優・戸川純の「おしりだって洗ってほしい」というCMで一世を風靡したが、昨今では公衆トイレにも導入されるなど、すっかりコモデティー化している。コモデティー化・成熟期に入った商品は差別化が困難になるため商品の「付随機能」を訴求することとなる。サービスサポートは、それがなくとも商品の使用は可能だ。しかし、特に高齢者などにとって便座の加温機能などに異常があれば、低温やけどなどの障害を引き起こす危険がある。高齢化社会を見越しての訴求である。
 特に住宅設備メーカーにとって、この先の10年という期間がどのような意味を持つのかも見逃せない。日本の人口は2005年にマイナスに転じた。一方、世帯数は少人数・単身世帯化が進んで2015年に5,060万世帯まで増加し、その後減少に転じると推計されている(国立社会保障・人口問題研究所調べ)。つまり、今、買われたシャワートイレの「お知らせ表示」が点滅を始める10年後には、次の商品の売り先は減少を始めているのである。「安心」を訴求し、さらに「安心感」を提供し続けて、10年後に買い換えの用がある際に指名買いをしてもらうことが欠かせないのである。
 INAXの戦略は、アンゾフの成長戦略のマトリックスで考えれば、上記の「安心感訴求」で、既存顧客に既存製品の価値を高めて提供する「市場深耕」と、上海万博に代表される、新しい市場に既存製品を提供する「新市場開拓」であることがわかる。それを、TOTOに現段階ではシェアが劣後するトイレで勝負をかけているのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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