飛行機は航空会社のものかリース会社のものか:IFRSの新リース基準

2010.09.01

経営・マネジメント

飛行機は航空会社のものかリース会社のものか:IFRSの新リース基準

野口 由美子

2010年8月に国際会計基準審議会(IASB)からリース取引について基準書の公開草案が公表されました。リース取引の会計処理は大幅に変わります。

2010年8月に国際会計基準審議会(IASB)からリース取引について基準書の公開草案が公表されました。リース会計については現在進行している IFRSの改訂プロジェクトの中でも特に注目されているトピックのひとつです。なぜなら、これまでのリース取引の会計処理を抜本的に変更することが予定されているからです。

今回の公開草案で最も大きな変更点は従来はオフバランス処理が認められていたリースについてもオンバランスが要求されていることです。

現行の基準ではリース取引をファイナンス・リース(キャピタル・リース)とオペレーティング・リースの2種類に分け、ファイナンス・リースについてはリースを資産として計上することが必要でした。

公開草案ではこの分類がなくなります。すべてのリース取引について資産を「使用する権利」を資産として計上することになります。
従来は実質的に借り手側がリース資産を所有しているのと変わらないような使用状況である場合にファイナンス・リースとして借りている側が資産計上を行なってきましたが、「使用する権利」に着目しているため、オペレーティング・リースであっても資産計上が必要となります。

実際に計上する金額の決め方も従来の方法とは変わります。
特徴的なのはリース期間やリース契約についている条件についての考え方です。
リース期間については、解約や延長などのオプションを考慮した上で一番長くリースを行なう期間とします。一番長くなるリース期間が実際にリースを行なう期間となるかは50%超の可能性であることが必要なので、契約内容から企業としてどのような使用期間を想定するか検討する必要があります。
また、使用状況などによってリース料が変わる条件付きのリース契約や中途解約の罰則金などについてはその発生可能性を加重平均で評価することになります。

従来のリース基準では契約ではなく取引の実態を検討することが求められてきましたが、今回の公開草案ではリース契約をした後にリース資産をどれだけ使用するのか、というところを考えなくてはならなくなります。今まではいろいろな手法でオフバランス処理ができる場合がありましたが、これからはオフバランスのメリットを取るのは非常に難しくなると思います。
Sir. David Tweedie IASB議長がリース会計について「自分が死ぬまでに航空会社のBSに資産計上されている飛行機に乗りたい」というコメントをしていました。
まさにそれが実現する公開草案が公表されたわけです。

野口由美子

株式会社イージフ 
http://aegif.jp/

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