牛丼戦争どこ吹く風・神戸らんぷ亭の「牛丼3兄弟」戦略

2010.07.28

営業・マーケティング

牛丼戦争どこ吹く風・神戸らんぷ亭の「牛丼3兄弟」戦略

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 果てしないチキンレース。もしくはノーガードの殴り合い。第3次牛丼戦争は、今回は吉野家が仕掛けた牛丼並110円下げの270円に対し、松屋70円下げの250円・すき家も30円下げの250円で応戦するという構図になった。そんな中、小規模牛丼チェーンを展開している「神戸らんぷ亭」は全く独自の展開で生き残りを図っている。

 味噌牛丼は今年3月に2店舗限定で販売したメニューが原型になっている。500円という価格にもかかわらず、多くの注文が相次いだといい、その好評を背景に同社はニュースリリース開発の背景を以下のように述べている。
<ラーメンにはしょうゆ・塩・味噌などバラエティに富んだ味が楽しめるにもかかわらず日本人にとても愛されてきた国民食である牛丼がしょうゆの1種類しかないというのはあまりに世の中のニーズに応えていないと考え、従来の既成概念を打ち破り商品開発に取り組んだ>とのことだ。

 神戸らんぷ亭のメニューは、牛丼以外にカツ丼があることが大手牛丼チェーンにない特徴だ。しかし、それ以外は、定食が「おろし牛皿定食」「ハンバーグ定食」「さば味噌定食」。カレーがポークと牛とハンバークの3種があるのみだ。
 牛丼戦争における吉野家苦戦の原因の一端はメニュー展開の乏しさにあるといわれている。その意味では神戸らんぷ亭のメニューも魅力的とは言い難い。しかし、調達力に劣後する状況で安易なメニュー拡大は収益の悪化を招くことになる。そこで、同社は牛丼の味付けのバリエーションという大手が手を出しにくい展開を考えたわけだ。

 塩牛丼、味噌牛丼は通常の牛丼とタレ自体が異なるため、全く別鍋で調理・サービスする必要が生じる。ギリギリに設計された厨房・調理器に追加設置するには調整が必要となる。また、厨房のオペレーションも複雑になり、マニュアルを修正し、スタッフへのトレーニングと徹底も欠かすことができない。それを800~1300店舗をかかえる牛丼3強のチェーンが模倣することはほぼ不可能である。

 同じ業界のプレイヤーであっても、次元の違う規模で展開している場合、間違っても同じ土俵で戦おうなどとは思ってはいけない。しかし、消費者からは同様の基準で評価されがちなのは確かだ。調達力において規模の経済が働かない神戸らんぷ亭の、価格とメニューにおける魅力不足を補う、「牛丼3兄弟戦略」は、小規模チェーンならではの小回りの聞く利点を活かした展開だ。
大手同士の戦いの足下で生き残る、大手ができない戦い方に知恵を絞る神戸らんぷ亭の戦略には学ぶところが大きいだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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