「さよならラ王」・フレームワークで考える終焉と復活

2010.07.27

営業・マーケティング

「さよならラ王」・フレームワークで考える終焉と復活

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 日清食品の生麺タイプのカップ麺「ラ王」が8月に販売を終了するという。その告知を巡ってWeb上では大きな反響を呼んでいる。

 ラ王を巡る競争環境はどうなっているのか。3C分析で考えてみよう。
 PEST分析の結果通り、Customer(市場の環境・顧客のニーズ)は「デフレ不況、及びと健康志向の高まりと反動的なメガフードの定着」という環境の中で、「もう少しボリューム感があって、もう少し安くて、もっと美味しい麺のカップ麺が食べたい」というニーズを抱えた顧客が増えているという状況だ。
 Competitor(競合の動き)としては、生麺ではないものの、ノンフライの乾麺やメーカー独自の工夫をした麺が、従来にない食感を実現し、消費者のニーズにマッチし始めているという状況だ。しかも、本格的な味を追求する縦型カップではない、丼カップ型のタイプでも200円を超える商品はほとんど存在しないという、デフレ対応のプライシングが定着している。競合商品がバッチリと顧客のニーズをすくい取ってしまっている状況である。
 Company(自社)は、「ラ王」だけを考えれば、PEST分析の結果からCustomer、Competitorまでを見ても、既に競争力を失い陳腐化している感が否めないことがわかるだろう。

 日清食品は2009年にカップ麺のブランド横断で「全麺革命」というコンセプトで製品改良を行っている。例えば「麺職人」などは<「もう、インスタントとはいわせない。」生めんのような、豊かな風味と食感が自慢のノンフライどんぶり型カップめん。このたび、具材を充実し、さらにおいしくなりました。>(同社サイトより)というコンセプトを実現した。
 もはや「ラ王」は存在意義を失ったのである。ラ王がそのまま自社の製品ラインナップに存在することはカニバリ(共食い)をひき起こすことにもつながり、ブランドマネジメントの観点からも看過できないはずだ。
 しかし、従来の常識を覆す生麺を用いるという新発想で、カップ麺に革命をもたらし、本格的なラーメンを実現したその偉大な足跡は忘れることはできない。

 「わが生涯に一片の悔いなし」。
 1983年から88年に少年ジャンプに連載された大人気漫画「北斗の拳」。その登場人物である、同音異字の「ラオウ」の最後の言葉だ。ネット上では、ラ王の販売終了に際して「ラオウの最期」を多くの人が連想している。確かに、カップ麺の歴史に偉大な足跡を残した「ラ王」にも悔いはないかもしれない。

 しかし、せっかくここまで育てたブランドを、そう易々と日清食品が手放すとは思えない。よく見れば、「ラ王追湯式典」の告知サイトには、「さようなら、生タイプ」としっかり書いてある。恐らく、ラ王ブランドはそのままに、日清の全麺革命の技術で生み出された乾麺を用いて早々にリニューアルされることが予想される。

 7月30日の「追湯(ツイートウ)」も、明らかにミニブログ・Twitterの「Tweet(ツイート:書き込み)」の連想を狙っている。恐らく追悼しながら乾麺としての復活を告知するイベントになるのではないだろうか。
「新生ラ王」がいかにマクロ環境と競争環境に適応するのか、今から楽しみである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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