数十億円のカネを捨ててまで、マネックス証券を設立した理由(後)

2010.07.24

経営・マネジメント

数十億円のカネを捨ててまで、マネックス証券を設立した理由(後)

ITmedia ビジネスオンライン
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ネット証券の草分け的な男として活躍してきた、マネックス証券の松本大社長。米経済誌『フォーチュン』で「次世代を担う世界の若手経営者25人」の1人に選ばれた男は、どのような人生を歩んできたのだろうか。 [土肥義則,Business Media 誠]

 また「あまり悩んでも仕方がないじゃないか」という気持ちもありました。まさに“走るのみ”といった感じ。しかし、現在もそうか? と聞かれると、今はいろいろなことを考えていますね。会社も大きくなったし、自分の年齢の問題もあり、走っていればいいということではない。社員も株主もお客さんもいるので、しっかり考えていかないといけない。

会社を立ち上げたことは、正しい決断


――マネックス証券は2000年8月に上場を果たし、60億円の資金を調達した。開業から16カ月での上場は、当時としては最速であった。

 上場したものの、その後は赤字続き。50億円ほどの累損をつくりましたね。資本準備金を食い尽くすことになり、工藤はとても心配していました。「この先、会社はどうなってしまうんだろう……」「株主から預かったお金はどうなるんだろう……」と。ただその後、業績を順調に伸ばし続け、1年ほどで累損を一掃することができました。そして黒字を確保し、きちんと法人税を納めていることを誇りに思っていますね。このことを言うと、疑問に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。「なぜ、そんなことを言うの?」と。しかし会社を立ち上げて、それなりの経済活動を行い、それなりの額を国に納める――。このことはとても大切だと思っているので、マネックス証券が初めて納税したときは、本当にうれしかったですね。

 いま振り返ってみて、上場前のゴールドマン・サックスを辞めてまで会社を立ち上げたことは、正しい決断だと思っています。もしあのとき「大金が手に入る」ことに目がくらみ、そのまま残っていれば、お客さまを裏切ることになったかもしれません。自分の懐が潤うことばかり考えていては、やがて金融界で相手にされなくなるでしょう。どのような理由があったとしても、お客さまをだますようなことだけはあってはいけない。この考えは、今後も決してブレてはいけないことだと思っています。(本文:敬称略)


今回インタビューした、松本大氏(まつもと・おおき)のプロフィール
1963年、埼玉県で生まれる。1987年東京大学法学部卒。ソロモン・ブラザーズ・アジア証券を経て、ゴールドマン・サックス証券に入社。当時最年少でゼネラル・パートナーとなる。1999年、ソニーと共同でマネックス証券株式会社を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングスを設立、代表取締役社長CEOとなる。

【関連リンク】
『私の仕事術』(松本大、講談社+α文庫)

~数十億円のカネを捨ててまで、マネックス証券を設立した理由  終わり~

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