食事に合う「午後ティー」の狙いは何だ?

2010.06.24

営業・マーケティング

食事に合う「午後ティー」の狙いは何だ?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 海の見える夏のガーデンで蒼井優がケンタロウ特製・ココナツミルクカレーに舌鼓を打ち、「午後の紅茶・無糖プレーンティー」を飲む。楽しげなCMの裏には、実は大きな作戦が隠されているのである。

 「食事に」と訴求できるカテゴリーがないが、キリンビバレッジは、飲料市場が炭酸カテゴリー以外、緑茶、ミネラルウォーターなどが軒並みマイナス成長のなかで、伸長している紅茶カテゴリーのトップブランドを持っている。その外部環境の追い風と、午後の紅茶ブランドの強みを活かそうという戦略なのだ。

 紅茶を食事に合わそうという方法論は、実は斬新なものではない。1990年に大塚食品が発売したストレート紅茶飲料「シンビーノ ジャワティーストレート」。
 本木雅弘がスタイリッシュに踊るCMで語る台詞が、「どんな食事にも合う・合う」だ。さらに、翌91年には新CMで「ウーロン茶は去年だよ」と語っている。
 つまり、ウーロン茶ではなく、紅茶飲料を食事の時に摂る新たな飲用習慣は、20年前に既に提案されていたのである。しかし、当の「ジャワティー」は、2009年には金城武が海外勤務の会社員を演じ、仕事の行き詰まり飲用と空を飛んだり恐竜と戦ったりする妄想でカタルシスを得るCMを展開している。つまり、訴求内容は「リフレッシュ感」がメインでもはや「食事」とは遠く離れているのだ。そのポジションを午後ティーは「無糖プレーンティー」ですっぽりと同質化したわけだ。

 戦場に出て、そこで用いるのにピッタリな武器がなければ戦いを諦めるのか。しかし、敵は待ってはくれない。また、せっかくのチャンスが到来していても、そこで手をこまねいていたら、勝利の女神は微笑まない。まずは手元にある武器でどう戦うか。そこで活かせる方法はないかを考えるだろう。
 紅茶市場の伸長というチャンスに、自社には食事に合う飲料がなく、そのポジションを負わせられる製品はそれぞれ別の戦端を開いていたり、戦う戦力としては弱かったりという状況にあったキリンビバレッジ。そこで、「午後の紅茶」ブランドを使った新たな戦い方と考えたのが、今回の展開ではないかと考えられる。
 どんなときにもベストな戦力・装備で戦えるということは希だ。制約条件の中で、どう工夫して戦うかというお手本として、この展開から学ぶものは大きい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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