「デパクロ」の功罪と百貨店の明日

2010.06.18

経営・マネジメント

「デパクロ」の功罪と百貨店の明日

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 日経MJの「2010年上期ヒット商品番付」が発表された。大型ヒット商品の不作で東の横綱不在という寂しい結果の番付表。その東前頭3枚目に「デパクロ」が列せられた。「デパート+ユニクロ」を意味し、<フォーエバー21なども含め低価格衣料品店が百貨店に相次ぎ進出し集客>※1とある。その百貨店はどこへ行こうとしているのだろうか。

 「小売りの王様」といわれる百貨店の苦境は、日経新聞、日経MJの記事には連日何かしらが掲載されているような状況が続いている。そして、今のところその出口は見えない。しかし、いくつかの模索する動き中で特徴が見えてきた。

■「デパクロ」は救世主たり得るか?

 上記番付の「デパクロ」。<4月に新宿高島屋店(東京・渋谷)やそごう川口店(埼玉県川口市)に開業した百貨店(デパート)内の「ユニクロ」が盛況>と記事※2にある。同時に番付表の寸評にも名が挙がっているフォーエバー21に関しては、<米フォーエバー21が開業した松坂屋銀座店(東京・中央)は5月の売上高が4.4%増えた。フォーエバー21目当ての客が食品売り場などに流れるといった波及効果も生まれた>としている。

 では、「デパクロ」は今後、百貨店復活の目玉になり得るのかといえば、別の日の日経MJの記事※3から、どうやらそうではない様相が見えてくる。
 <フォエバー21とともに婦人靴や雑貨の集客の目玉>として松坂屋銀座店に誘致された<神戸レザークロス(神戸市)が本館2階で手掛ける「エスペランサマーケット」。SHIBUYA109(東京・渋谷)内の人気6ブランドを複合した新業態で、ファストファッションを意識した試みが詰まっている>という。しかし、<出店から1ヶ月半で「フォーエバーの来店客が回遊してくるとの見込みは甘かった」>という結果だという。

■相乗効果が出ない「デパクロ」?

 食品売り場などへの回遊効果はあるものの、元々の狙いであった、衣料品や靴・雑貨への波及効果はない。低廉なファストファッションだけを求めるのではなく、例えばインナー・軽衣料はファストを購入した客が、アウター・重衣料は百貨店の通常売り場の商品を求めるという相乗効果を期待していたはずだが、その見込みは外れている。従来の売り場・商品だけでなく、ファストファッションとの親和性が高いはずの109銘柄のブランドにも流入せず、衣料品売り場をパスして食品売り場に流れてしまう状況は予想外だっただろう。
 松坂屋とフォーエバー21の契約に関しては、店舗建て替えまでの期間限定賃貸契約である。賃貸契約故に、フォーエバーの売上げは松坂屋の売上げとは別立てだ。復活の切り札にはなり得ていないのだ。

■相乗効果が出ないワケ

 企業が顧客から収益を上げる方法を大別すると、1つは「アップセリング」である。
 「同種の商品の買い換え・買い増し」で購入点数を増加させて売上げ・利益を増すわけだ。とりわけこの手法が得意なのがユニクロである。同種の商品のカラーバリエーションやデザインパターンで1顧客に数点から十数点を売る。そうでなければ、ブラトップ1200万枚、ヒートテック5000万枚の販売目標は立てられない。フォーエバー21などのファストファッションは同商品のバリエーションではないが、店内での自社ブランド商品を複数買わせる意味でアップセリング型であると考えてもいいだろう。
 つまり、「デパクロ」は特性として、ユニクロやファストファッション売り場でアップセリングをして、そこで完結してしまうため、他の衣料品への波及効果が出にくいのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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