日本市場のこれから:「あなたの顧客は何歳ですか?」

2010.05.26

営業・マーケティング

日本市場のこれから:「あなたの顧客は何歳ですか?」

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 喜多方ラーメン「坂内」「小坊師」を全国で56店展開する株式会社麺食が、若者向けラーメン店を開くという。そこからは、ラーメン店や飲食業界だけでない、今日の日本市場全体の課題が見えてくる。

 人は永遠の存在ではない。故に、それは常に考慮すべき要素なのだが、検討し、対応策を考えられている企業は少ない。例えば、百貨店が苦境に立っている一因もそこにある。
 日本と比べて好調さが伝えられる韓国の百貨店の強さのヒミツもそこにある。
 日本より国民人口が少なく、より少子高齢化が進んでいる韓国においては、「待ち」のビジネスは通用しない。ニーズを掘り起こして需要を喚起することが欠かせないのだ。
 日本においては、若者の需要は各種専門店に奪われている。しかし、韓国では若者需要を百貨店がしっかりと取り込んでいる。それは、積極的に若者のニーズを探って、それに対応した品揃えや売り場作り、また、出店計画などを実行してきた成果である。

 但し、ターゲット層を大胆に変更すると、今まで自社の売上げを支えてくれていた既存顧客層の離反を招くことになる。その点、喜多方ラーメン坂内・小坊師の戦略には若干不安が残る。
新型店は、既存の「坂内」ブランドで展開し、現在の56店から13年までに100店を目指す新規出店計画は、いずれも内外装・メニュー共に若者向けに転換し、既存店も順次新型店に改装していくという。(日経MJより)

 韓国の百貨店は、実は若者客の取り込みだけでなく、高齢者へのライフスタイル提案が真骨頂なのだ。例えば、現代百貨店では、「中高年への若返り提案に力を注ぐ。実際の年齢より10歳程若い着こなしや健康管理、趣味などを、商品やイベントを通じて積極的に訴える」(日経MJ10年1月1日号より)という。つまり、新規顧客への転換だけでなく、既存顧客への提案による囲い込みを同時に行っていて、それらが車軸の両輪となっているのだ。

 もちろん、ラーメン店と百貨店では環境が違い、戦略が異なるのは当たり前で、どちらが正解というわけではない。しかし、この2つの事例から学ぶべくは、「自社の顧客層はどのような年齢なのか」を正確に把握し、それに対して、今後どのように対処すべきなのかを考えて、明確な手を打っていることである。

 少子高齢化によって、日本市場が縮小することはもはや避けられない。
 その環境下では、もはや今までの方法論は通用しない。検討すべき切り口として「年齢層」が大きな要素となっていることを認識して、戦略を練ることが欠かせないのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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