弱みは克服するな!~人と組織の成長戦略~

画像: spinster cardigan

2010.05.17

経営・マネジメント

弱みは克服するな!~人と組織の成長戦略~

松本 真治
有限会社ワースプランニング 代表取締役

 新年度が始まり、新しい職場や新しい役職・立場に異動された方も多いだろうが、1カ月強が過ぎ、ようやく新しい環境に慣れてきたころではないだろうか。能力を発揮し成果に結び付けていくのはこれからであろうが、新しい人間関係がうまくいかず、十分に能力を出しきれていないと感じている方も多いのではないだろうか。特に部下を持つ方は、自身よりもメンバー個々人の能力を十分に引き出していけるかどうかは死活問題である。

 先日、某大手書籍売り場に行くと、ビジネスの平積みのコーナーをみて驚いた。新刊本に交じって、かなり前に発刊された本が平積みされているのである。ドラッカーの本と「さあ、才能に目覚めよう」である。

 ドラッカーは、関連本の「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の売れ行きの影響もあるが、「さあ、才能に目覚めよう」は、2001年に発売された本である。「あなたの5つの強みを見出し、活かす」との副題が示す通り、強み発見の指南書として知る人ぞ知る名著である。200万人超の調査から人の強みは34に収斂されるということで、その内、誰しも持っている5つの強みを発見し、伸ばしていくことが才能を発揮するために重要であるというのが本書の主張である。

 強みを活かすことの重要性、必要性が、日本においても注目されつつあるということは、大きな進歩であり、潜在的な今後の成長を秘めている。しかし、実際に変化が起きているかというと、まだまだである。

 世界的にみても現実は厳しい。世界規模の調査会社であるギャラップ社が以前1700万人以上の企業組織で働く従業員に「最も得意な仕事をする気かに毎日恵まれているか」という調査を行ったところ、「YES」と回答したのはわずか20%であった。要するに、現実には、わずか20%しか、自分の強みを発揮できていると感じていないのである。

 日本では、学校教育をみてもわかるように、強みを活かすことよりも、弱みを克服することに重点が置かれてきた。この影響もあってか、日本の多くの企業の従業員も、才能や強みを伸ばすよりも、どちらかというと弱点を克服するように指導されてきている。最も成長の余地があるのは、その人の一番弱い部分であるという誤った認識もある。この様な状況下では、自分の強みを発揮できていると感じていない人の割合はもっと高いのではないだろうか。

 日本の多くの企業では、高いパフォーマンスを生み出すハイパフォーマー人材モデルを全員共通の目標とし、その人材モデルと比べて、劣る部分である弱みを克服することに力を注いできた。市場が成長途上の背景下では個々人の画一的な成長の総和が企業を発展に導いてきた。
 しかし、市場が成熟し、競争がグローバル化している現代、そして、その様な状態がさらに強まっていく今後においては、新しい付加価値を創り出していく力とスピードが求められていて、画一的な優秀人材の生み出す成果の総和よりも多様性のある強みの掛け算による成果の創出の方が勝っていくこととなるであろう。

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松本 真治

松本 真治

有限会社ワースプランニング 代表取締役

人材・組織開発コンサルタント。 人材・組織の潜在力を引き出すアセスメント(サーベイ)の企画/開発/運用から本質的課題を抽出し、課題解決のための最適なソリューション(研修・教育プログラム)の設計/運営までのコンサルティング・サービスを展開中。 人/組織が本来持ち備えている力(潜在力)を引き出し、人/組織が自律的で持続的な成長を遂げていく支援をさせていただいています。

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