不景気下で最高益・亀田製菓の強さのヒミツを読み解く

2010.05.13

営業・マーケティング

不景気下で最高益・亀田製菓の強さのヒミツを読み解く

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 社名を聞けば「亀田のあられ、おせんべい♪」のサウンドロゴが思い浮かぶ人も多いだろう。「柿の種」や「ハッピーターン」で有名な亀田製菓が11日、2010年3月期連結決算を過去最高と発表したという。その強さのヒミツを読み解いてみよう。

 「新市場開拓」はゆかしメディアの記事に<米国など海外展開をしている柿の種も好調>ともある。
 <2008年4月にアメリカのカリフォルニア州で柿の種を「kakinotane」の名称で試験的に販売、その後販路を拡大した>とWikipedia に記述がある。また、市場特性に合わせて商品を最適化している点も見逃せない。<[アメリカ版の柿の種はアメリカ人の嗜好に合わせ、イリノイ州産の大き目のピーナッツを使用しており、ピーナッツ自体も塩味で味付けされている>(同)という。そして、商品ポジショニングも<アメリカでの健康ブームに合わせ、ノンフライであることを売り文句にしている>(同)と明確化しているのである。

 マーケティングミックス(4P)でも検証すると、(商品)は、ハッピーターン、柿の種、「おばあちゃんのぽたぽた焼」などのスター商品(Product)を、各種販売チャネル(Place)にパッケージ容量などを最適化して投入。さらに海外チャネルも開拓した。
 そして、同社の眼目は価格(Price)と広告展開(Promotion)にある。
 冒頭のゆかしメディアの記事に、<価格競争に参加するのではなく総量の調整で乗り切った>とある。長引く不景気の中で、多くの食品メーカーを原材料の高騰が襲った。価格転嫁ができずに利益を減らしたり、値上げによって客離れを起こしたりした例も少なくない。「適量化」とは、「量目(りょうめ)調整」ともいわれる、価格を据え置くか下げ、内容量を減らす実質値上げである。やり過ぎれば、同じく客離れを起こすことになるが、うまい落としどころを探れば、売上げダウンを回避できる。パック売りのソーセージなどが成功例としてある。亀田製菓もその微妙なさじ加減を成功させたのである。
 さらに、不景気での売上げダウンに対応して、広告投資を抑制し、利益を確保して黒字化を狙う企業が相次ぐ中、積極的な広告投資という逆張りも奏功したのだ。

 同社の戦略は、市場深耕のために商品改良をどんどん繰り返し、新商品開発を急ピッチで行って競合に後れを取らないようにし、新市場へも果敢にアタックする。それらの活動をしっかりと市場に告知しなければ、売上げにはつながらない。広告投資も戦略全体を見渡せば、整合性がきちんととれているのである。

 とかく縮小均衡に陥りがちな不景気化の戦略。まして、日本市場は確実に縮小を始めている。そんな中で、果敢に拡大路線で成功を勝ち取っている亀田製菓の展開に注目し、学んでみてもいいだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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