マジックナンバー10%!アサヒ飲料「六甲のおいしい水」買収

2010.04.13

経営・マネジメント

マジックナンバー10%!アサヒ飲料「六甲のおいしい水」買収

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 4月8日、アサヒ飲料がハウス食品の「六甲のおいしい水」事業を買収したと発表があった。その戦略的意図を考察してみよう。

 <アサヒ飲料株式会社による、ハウス食品株式会社のミネラルウォーター事業取得に関するお知らせ>(ニュースリリース)
 http://www.asahiinryo.co.jp/newsrelease/topics/2010/pick_0408.html

 アサヒ飲料は4月6~7日に日経新聞カラー全面で、川原亜矢子をキャラクターに「ミネラルウォーターなのに、なんでミネラルの種類で選ばないんだろう」と、「富士山のバナジウム天然水」の広告を展開。テレビでも「毎日飲む水だから、私ならミネラルで選ぶ」とCMを投下して、商品リニューアルと共にブランドを強化している矢先である。

 そのそも、国内のミネラルウォーター市場はどうなっているかといえば、「微増」だという。同ニュースリリースで<清涼飲料市場内の構成比で約10%><輸入ミネラルウォーターの大幅な落ち込みにより前年に対し4%~5% 程度縮小したとみられるものの、国産ミネラルウォーターに限れば、前年並みから微増程度で推移しており、今後も拡大が期待される市場>であるという。
 では、その中でのシェアを見てみよう。富士グローバルネットワークが発表している2010年03月22日~2010年03月28日の小型PET容器ミネラルウォーターのコンビニPOSデータだ。
 つぶせる軽量PET容器が若年層に人気で大ヒットした、日本コカ・コーラの「いろはす」がトップの26.8%。飲料業界第2位のサントリーの「天然水(南アルプス)」18.4%。ダノン・キリンビバレッジの「ボルヴィック」が11.1%という状態だ。
 ニュースリリースによると、2009年の「六甲のおいしい水」の市場シェアは7%。一方、「富士山のバナジウム天然水」は3%であったという。合計10%。この数字が実に意義深いのだ。上記POSデータは小型容器のみなので単純には比較できないが、あえて乱暴にいえば、国内シェア第3位を狙えるポジションになる。しかも、トップシェアが26.8%という群雄割拠の様相である。

 ランチェスター戦略における「クープマンの目標値」で考えれば、「いろはす」のシェアにほぼ近い、26.1%が「市場影響シェア」という状態である。市場に影響をもたらす、一歩抜け出した状態を示すシェアであるが、2位以下であれば、トップを狙えるポジションであると同時に、トップなら逆転される可能性がある状態を示すのだ。
 一方、今回アサヒ飲料は目指した10%という数字は、10.9%という「市場認知シェア」に近い。生活者が自ら思い出せる(純粋想起)ギリギリのシェアであると同時に、競合から存在を意識されるボーダーラインだ。元々の六甲のおいしい水の7%はというと、6.8%の「市場存在シェア」、生活者が人からヒントを出されて思い出せる(助成想起)レベルのシェアであり、市場において、かろうじて存在が許されるレベルだ。「富士山のバナジウム天然水」の3%はそれにも満たない状態であった。
 事業買収によって、アサヒ飲料は2位以下でもトップを狙えるミネラルウォーター市場において、市場から認知され、存在が忘れられないというチャレンジャーのパスポートを手にすることができたのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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