キリンVS.サントリー?「世界のハイボール」は実は根が深い!

2010.02.15

営業・マーケティング

キリンVS.サントリー?「世界のハイボール」は実は根が深い!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 「ハ~イボ~ル、ハ~イボ~ル♪」。ディズニー映画・白雪姫の劇中歌をナインティナインの岡村隆史が大航海時代風の帆船の上で高らかに歌うCM。キリン・「世界のハイボール」だ。

 ・・・しかし、商品は 「樽熟成ウィスキーソーダ」と「樽熟シェリーソーダ」。ちょっと待て。「ウィスキーソーダ」は確かにハイボールそのものだ。だが、「樽熟シェリーソーダ」はないだろう!と突っ込みを入れてみたくなる。・・・だが、この展開、実は根っこが極めて深いのだ。

 キリンのWebサイトで商品を確認してみる。
 <アメリカ ケンタッキー州 ウィスキー 「樽熟成ウィスキーソーダ」・原材料:ウォッカ・ウィスキー>とある。ウォッカがかなり気になるが、ウィスキーはケンタッキー州ならバーボンだろう。バーボンのハイボール。これは、OK。
 <スペイン アンダルシア地方 シェリー「樽熟シェリーソーダ」・原材料:ウォッカ・シェリー>。ちょっと待った!シェリーは、熟成酒精強化ワインだ。ウィスキーとは違う。
 両商品を買って確認してみると、缶の印刷に<ウォッカとソーダでつくったクリアハイボールに、樽熟成したウィスキー(シェリー)を加えて仕上げました>とある。つまり、ウィスキーもシェリーも「フレーバー」に過ぎないのだ。

 キリンは次のように述べる。<新ハイボールの提案:日本では、ハイボールとはウイスキーをソーダで割ったものという認識が一般的です。「キリン 世界のハイボール」は本来のハイボールの意味であるスピリッツ(蒸留酒)をソーダやトニックウォーター等の炭酸飲料等のアルコールの含まれていない飲料で割ったものをご提案いたします。>

 えええぇぇぇ?と思い、Wikipediaを調べると、ほぼ同様の記述がある。その出典は<サントリー用語辞典「ハイボール」>とある。しかし、サントリーのサイトを見ると<ウイスキーのソーダ割りのこと>と明記されている以外の記述はない。誰かがどちらかを書き換えているのか?

 ハイボールがウィスキー以外でもOKだと困るのはサントリーだ。劇的大ヒットを遂げたハイボール。サントリーの缶入り「角瓶ハイボール」も売れている。飲み屋でもすっかり定着した。しかし、そのヒットもいつまでも続くわけではない。「次は何だろうねぇ?」と呑みの席でも噂されるようになっている。
 サントリーの狙いは、とにかくウィスキー本体につなげることだ。「WHISKY on MUSIC」と題してサントリーのウィスキーブランド横断でミュージシャンとのコラボレーションを展開し、イメージ的には「ロックで飲むオシャレなウィスキー」を訴求している。

 キリンはといえば、ウィスキーブランドは「ロバートブラウン」なども抱えているが、イマイチ、弱いところは否めない。それよりも、ビールをはじめとした総合アルコール飲料メーカーの強みを活かしたいところだ。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

フォロー フォローして金森 努の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。