映画「インビクタス」から学ぶ真の信頼関係とは

2010.02.08

経営・マネジメント

映画「インビクタス」から学ぶ真の信頼関係とは

三宅 信一郎
株式会社BFCコンサルティング 代表取締役

製品やサービスが流通するのは、「需要」と「供給」の原理が働くからといいますが、それだけではありません。 そこにもうひとつの極めて重要な要素である「信頼」というものがないと、流通はしないのです。 今回は、「信頼するということ」について考えてみたいと思います。

「マンデラさん。 
 私は、南アをアパルトヘイトから永遠に決別させ、国際社会に
 復帰させたいと思っています。
 そこで、あなたに新生南アを任せることを約束します。 
 
 一方、あなたが権力を握っても、白人に対して仕返しだけはしない
 と約束してほしいのです」

と言いました。

◆マンデラは

「分かりました。 約束します

と言い、結果として1990年2月、ついに白人の目の敵であったマンデラ
は、釈放されたのでした。 

◆マンデラもデクラークも相手を信頼することが唯一の拠り所でした。
それ以外何があったでしょうか?
というのも、彼らを取り巻く周りの環境の厳しさを考えると、お互い
相手を信じること
以外に、恐らく何も手段はなかったと思います。

◆筆者のような凡人から察すると、当時のマンデラの思いとしては、

「30年ちかくも自分を独房に閉じ込め続けたにっくき白人政権が
今更何を言うか!
そんな連中の言うことなど到底信用できない。 
釈放とは名ばかりで、出獄した途端に殺されるかもしれない」

と思っても不思議ではないと思ってしまいます。

◆一方、デクラークも、

「永年白人と徹底的な武装闘争を続けてきた黒人解放のカリスマで
あるマンデラに権力を渡した途端どうなるか?
今までの永年の白人に対するうらみつらみを果たすべく、白人に
対して徹底的な仕返しを開始するかもしれない。
結果、南アから白人を追放されてしまうかもしれない」

と思っても不思議ではありません。

◆現に、周辺のモザンビークやジンバブエなどの多くの国家が、
白人から黒人に政権が移行するや否や、独裁国家となって、結果
として白人が追い出される
という結果を迎えています。

◆しかし、彼ら二人は違いました。

色々な思いはあるにしても、それを封じ込め、何より相手を深く
信頼することにより、牢獄で取り交わした人間同士の約束を守るべく
それぞれの立場上とてつもなく困難な弊害に直面しながらも着実に
約束を実行した
のです。

◆まず、デクラークは、マンデラが議長を務めるアフリカ民族会議
(ANC)という非合法政党を合法化し、アパルトヘイトの根幹を支え
ていた「集団地域法」など主要な法律を次々に撤廃し、民主的な選挙
を実行し、マンデラ大統領誕生の基盤を構築したのでした。

◆デクラークが受けた保守系白人社会や右翼団体・保守政党からの
非難や浴びせられた誹謗中傷や汚名は、想像を絶するものだった
と思います。

◆彼はそれらをすべて甘んじて受けることを全て覚悟し、マンデラ
との約束を守ったのでした。

次のページ責任を問う言葉や、うらみ中傷を何一つこぼさない

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三宅 信一郎

株式会社BFCコンサルティング 代表取締役

事業力強化・新規事業開発・創業支援コンサルタント 自動認識基本技術者 (JAISA:(社)日本自動認識システム協会)認定

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