地方活性から日本再生へ 知事の思いは今・埼玉県上田清司知事3

2010.01.29

経営・マネジメント

地方活性から日本再生へ 知事の思いは今・埼玉県上田清司知事3

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

改革は地方から。ここ数年目立つのが、元気で、はっきりと物を言う知事たち。言行一致で改革を進めるその活躍ぶりは、日本の将来に明るさを感じさせる。地方自治の要、都道府県政を指揮する知事は、企業に例えるなら経営者である。様々な抵抗を打ち砕きながら、改革を遂行する考え方、行動力はマネジメントの良き手本となる。知事の改革を紹介、シリーズトップバッターを飾っていただくのは、埼玉を劇的に変えた上田知事である。

第3回「行政の仕事はチャンスを増やすこと」

■日本一の制度融資

「金融機関の貸出残高が急激に増えました。何しろ保証人なし、担保なしでも借りることができるよう制度を変えましたからね」

埼玉県独自の制度融資枠は2000億円あったが、貸出実績は過去数年1000億円程度にとどまっていた。景気悪化に伴い、枠自体は1000億円上積みされたが、実質的な貸出額はほとんど増えなかったのだ。

「制度を作って、そこで終わってたんですね。枠を増やしたんだから、やることはやったんだと。これでは残念ながら、仏作って魂入れずですよ。実際には資金繰りに困っている中小企業がたくさんあるんです。にも関わらず彼らが借りようとしないのは、制度設計のどこかに問題があるからです」

そこで知事が取り組んだのが融資制度の改革だ。無担保無保証のスーパーサポート資金を創設し、積極的な貸出策に打って出た。

「貸出を増やしたからといって損失補填が増えたなんてことにはなりませんよ。そこは審査をしっかりやりますから。借り手に借りやすく、しかも不良債権を増やさないような仕組みを作る、だからこそ知恵がいるんです。我々は銀行さんと一緒に知恵をふり絞りました。やればできるんですよ」

健全な貸出が増えれば銀行はしっかり利益を稼ぎ、それは結果的に法人関係税として県にも入ってくる。良い循環が回っているのだ。

「福祉や教育を充実させるためには原資が必要です。そのためには法人税を納めてくれる企業を増やさなければならない。産業を活性化するためには、どうすればいいかを真剣に考えたわけです」

制度を変えたという意味では、天下りの廃止を全国に先駆けて実施したのも埼玉県だ。しかも単に廃止するのではなく、従来の天下り先を将来の幹部候補生養成に活用している。見事な発想の転換である。

「本音を言えば人情的にはかなりつらいんです。60歳で定年退職してもらっても年金は63歳までもらえませんから。とはいえ、組織を活性化するために若い人を育てようと思えば、早い時期から外に出してトップとしてやらせるのが一番。つまり従来の天下り先に若い人を出すのがいい」

国政レベルでの天下りにも上田知事は独自のプランを持っている。独法のトップに局長の一つ手前、審議官クラスを派遣するのだ。

「独法に行って、きちっと成果を出した人を局長に抜擢すればいいんです。そうなるとみんな、目の色を変えて必死になりますよ。独法のトップに定年を迎えて上がり気分の人物を据えるのと、自分の将来を賭けた若い人材が着くのとでは、独法があげる成果がまったく変わってくるでしょう」

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