ディズニーの「シェリーメイ」戦略のキモはなんだ?

2010.01.28

営業・マーケティング

ディズニーの「シェリーメイ」戦略のキモはなんだ?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 1月22日に東京ディズニーシーで発売。購入まで最長5時間待ちだったと聞く。大人気のクマのぬいぐるみ「ダッフィー」のお友達という設定がなされた「シェリーメイ」。その存在には、ディズニーの戦略がたっぷり仕込まれている。

 何が起こるか。当然ファンは買う。いや、買わねばならないのだ。ファンであるほどに。
 シェリーメイの出現は、「リカちゃん人形」にボーイフレンド(初代)として「立花わたるくん」が発売されたのとはわけが違う。
 筆者の知る限り、多くのファンの間で「ダッフィーはぬいぐるみだから性別はない」という暗黙の了解があったようだ。故に、ミニーがもう一体、女の子のクマを作るというディズニーの絵図を知る由もないファンは、ダッフィーちゃんの着替えを手作りする際に、ひらひらしたの女の子っぽい衣装を作ってしまったりしていた。今、考えれば公式の衣装セットはどことなく男の子っぽい。
 ダッフィーは男の子だった。それが明確になった今、女の子の衣装は着させられない。故に、シェリーメイを、買うしかない。(むしろ喜んでだと思うが)。
 恐らく、筆者の自宅にも長時間行列しなくても買えるような安定供給がなされた頃には、シェリーメイがやってくるだろう。そして、バリエーションや衣装が増殖していくのだ。

 同一の商品の買い換え、もしくは買い増しを促進することを「アップセリング」という。かつて、デルコンピューターは4年間で3台PCを買わせるというプログラムを展開していたという。デスクトップを買う。しばらくすると、ノートPCの買い増しのお勧めが来る。その後しばらくすると、デスクトップの買い換えのお勧めが届く。
 とはいえ、そんなに簡単に買い増し・買い換えをしてくれるものではないが、ディズニーは易々とそれをやってのけた。ダッフィーとシェリーメイは別商品であるが、ファンでなければ同じクマのバリエーションだ。デスクトップとノートの違いぐらい。故に、これはアップセリングである。それも、とびきり勝率の高い。

 関連商品の販売を「クロスセリング」という。例示をパソコンつながりでヒューレットパッカード(HP)で考えれば、同社はプリンタも製造しているので、もれなくパソコンとの併買のお勧めがくる。
 ダッフィーのサイズ違い、キーホルダーなどは、クロスセリングだ。自分のダッフィーに感情移入し、人格(クマ格?)を与えている熱心なファンは、同時に2体自分の周りに存在させようとはしない。故に、関連商品としてバリエーション展開をしてクロスセリングを図っているのである。当然、シェリーメイもバリエーション展開があるはずだ。
 さらには、シェリーメイの登場によって、ダッフィーとペアの絵柄になった食器や各種グッズの発売も加速している。強力なクロスセルである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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