見事!フェニックスの「チャレンジャー」広告戦略!

2009.12.18

営業・マーケティング

見事!フェニックスの「チャレンジャー」広告戦略!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 リーダーの戦い方は、全方位戦略だ。強大な力であらゆるところ、あらゆる相手に戦いを展開する。それに対してチャレンジャーは「勝てるところを見つけて戦う」のが原則だ。リーダーに、全面戦争を仕掛けて犬死にすることは絶対に避ける。そんな視点で冬のアンダーウエア市場を見ると、実に面白いチャレンジャーがいることがわかる。

 冬用の暖かアンダーウエアのリーダーは間違いなくユニクロのヒートテックである。今年度の販売目標は、何と5,000万枚!しかし、消費者が「売って売って!」と列をなす。低価格でも、より薄くフィットするように、さらにより暖かく発熱するようにと毎年製品改良の努力を重ねた成果である。

 「冬のアンダーウェア、発熱するだけでいいの?」
 そんな、挑発的なキャッチコピーの広告を展開したのがフェニックス(Phenix)だ。その展開がチャレンジャーの戦略としては実に見事なのだ。広告は電車の車内吊りである。

 あったかいだけのアンダーウエアは、実は環境が整備された日本では使いにくい。活動のスタート時は激寒でも、動き始めると人間は発熱する。次はその熱をどのようにして制御するかが問題になってくる。
 寒波が押し寄せ始めた日本列島の朝、準備してあったユニクロのヒートテックや大手スーパーの暖かインナーの出番である。
 「ほら、パパ!これ、あったかいって評判だから着てって!」とあてがわれた夫たち。ところが、「電車の中じゃあちーよ!会社で汗臭いよ、俺!」と不満をつのらせることになる。

 電車という密室で、しかも「熱い」という不満が満ち満ちる絶好のシチュエーションで「フェニックス」「フェニックス」「フェニックス」と、三回もカタカナですり込まれる。フォントも微妙に凝っていて、興味を惹く。AIDMAのAttention・Interestバッチリだ。
 興味(Interest)を維持したまま、汗だくのまま、「フェニックスのアンダーなら、快適かもしれない」と、欲求(Desire)が高まる。そしてWebサイトを見てみれば何とも親切に、どうやったらアンダーのページに行けるかまで説明がしてある!PC苦手なパパもママも安心!
 そしてサイトをよく見れば、結構本気のスポーツメーカーだったりして、機能もなんかすごそうだ、とちょっとびっくり。

 しかし、価格はセール時のヒートテックが4枚以上買える値段…「おぉぉ…無理かもしれん…けど、ボーナス少ないけど出たし、いつもならコート買ってもらう所だけど、それは我慢して…「クリスマス…せめてこれを買ってくれ、嫁!」。Memoryをすっ飛ばして、Action、購入申請がなされる。そんな展開が多くの家庭で繰り広げられるのではないだろうか。

 じ・つ・は、他のスポーツウエアメーカーも、この「保温/放熱/汗発散/抗菌防臭」を実現してる所は多い。いわば「高価格帯のウエアメーカーでは当たり前の機能」でもあす。しかし、電車に乗っている人が全てパタゴニアを、CW-Xを、アンダーアーマーを知っている訳ではない。そう、その辺りのブランドを熟知している人は、今回のフェニックスのターゲットではないのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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