3人乗り自転車の普及方法をフレームワークで考える

2009.12.13

営業・マーケティング

3人乗り自転車の普及方法をフレームワークで考える

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

普及が進まないという3人乗り自転車。その原因と対策をフレームワークで考えてみよう。

 2009年7月に解禁された「3人乗り」。道路交通法で軽車両にあたる自転車は、それ以前でも補助椅子を付けた場合に限り6歳未満のこどもとの2人乗りが認められていた。しかし、実際にはこどもが2名いる家庭では母親が自転車の前後に補助椅子を付けて3人乗りをする姿も恒常化しており、黙認が続いていた状態である。
 自転車をめぐる事故の状況を見ると、平成20年に自転車が当事者となった交通事故が16万2,525件あり、交通事故全体の21.2%を占めるに至った。それは、10年前に比較して13.6%増となっている。(警視庁発表)
 3人乗りの解禁に際しては、平成21年に警察庁が招集した検討委員会の発表した、強度、制動性能、駐輪時の安定性、ハンドル・リヤキャリヤの剛性、転倒時の安全性に配慮、チャイルドシートは国内の規格・基準適合などの要件(一部抜粋)を満たしている自転車に限ることが義務づけられることになった。
 かくして、自転車メーカ各社から要件を満たした3人乗り自転車が発売されたが、一向にその普及が進まない。その理由の大きなものは車体価格4~5万円、電動アシスト付きの場合は10万を超えるという価格である。

 上記の通り、価格が普及のネックになっているのは間違いないが、さらに、普及が進まない理由の深掘りと、その対策をフレームワークで考えてみたい。

 まず、E.M.ロジャースの普及論における「イノベーション普及要件」で考えてみよう。

■相対優位性
 今までの無理矢理3人乗りをしていた通常の自転車と比べて、どれぐらい利用メリットがあるか認識きることが重要だ。「今までの自転車では十分な安全性が確保できていないので、3人乗り専用を導入しなさい」といわれれば、「そちらの方が良いのかも」とは思うかもしれないが、どれだけその導入が重要なのかが伝わっているかが疑問だ。前述の事故の増加状況、事故内容の重篤さ。さらに、通常の自転車と比較した専用車の安定性・安全性。十分伝える努力を強化する必要があるだろう。

■試行可能性
 本格的な導入のための「お試し」が、イノベーションの普及には欠かせない。3人乗り自転車でもこの要件は極めて重要だ。千葉県市川市では1年間の試用のための募集を行ったところ、128台に対してあっという間に422件の応募があり、抽選を行ったという。ニーズは高いのだ。

■両立性
 新しい専用車を導入する場合、置き場所の問題で今まで用いていた自転車を廃棄するしかない家庭は多いだろう。その事情も導入のハードルとなる。上記の試用期間は前の自転車を預かるような制度を設けてもよいのではないか。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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