おせちの中に世相が見える、戦略が見える!

2009.12.03

営業・マーケティング

おせちの中に世相が見える、戦略が見える!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 おせちブームである。景気の低迷によって「年末年始の旅行は控えるけど、せめてお家でちょっと豪華なおせちを食べましょうね」ってわけで、昨年あたりからブームに火が付いた。

伊勢丹
 高い。伊勢丹独自の価値を訴求する「オンリーi」をおせちで展開するとこうなるのか。京都下鴨茶寮のおせち取り扱いは伊勢丹と東急だけ。10万のは伊勢丹だけ。関西発祥ではないのに、大丸・高島屋・阪急を差し置いて、伊勢丹が専売。伊勢丹バイヤーは「いいものを一人勝ちで売る為には、ジャングルも戦場もかき分けて行く」らしいので、「孔明の家」にも3回行ったのだろう。下鴨茶寮が口説き落とされた様子も目に浮かぶ。

阪急
 伊勢丹とは正反対の攻め方。こちらも新しい。老舗ではなく、若手狙いである。京都では今「お高くとまった殿様商売の京料理店」に反旗を翻した若手料理人たちが「美味しい物を、全うな価格で」提供するきざしがあるという。伝統を守りつつ革新的で、価格は良心的。そんな若手達の店はこの不景気の中でも、何ヶ月も予約が取れなかったりする人気店になっている。そんなお店におせちをつくってもらっているのが阪急。人気を反映して売り切れも多い。

高島屋
 20万オーバーのおせちがあるのはここだけ。4人家族が食べたら一回で終わり。送料はなぜか1万のおせちも20万のおせちも300円。とこんな細かい所が気になる筆者のような者がターゲットでないことだけは確か。あぁぁすごい強気。

そごう・西武
 プロモーション的にすごく損してると思う。「そごう おせち」「おせち 西武」と、単体で検索すると順位がだいぶ低い。正解は「そごう・西武 おせち」なのだけど、各々の百貨店の顧客は「そごう・西武」と認識していないだろう。
 しかも、サイトの写真をみても、ショッピング画面にいけないのだ。「店頭か電話で注文」ですぜ。商品的には「おばあちゃんのおせち」シリーズなど、面白い企画もあるのだが、プロモーションと連動しておらず。残念。

東武
 こちらも少し残念。一応特設ページがあるのだが、ものすごい階層が深くてなかなかたどり着けない。しかし商品的には、好きなものを選んで重ねられるというアソートおせちがあるなど楽しさのある企画も充実している。

京王
 「多摩地区産の食材にこだわり」などと、ものすごく限定された地域のおせちで特徴を出している。もう一つのポイントは、京王プラザホテルと2段構えの展開。「ホテルのシェフが作るおせち」という強力なカードしっかり使っている。活かすべき強みを有効に使うお手本だ。

小田急
 おせち→お正月→家族が集まる→宴会→「かにまつり!」という文脈が面白い。他の百貨店がおせちと、お正月宴会料理のページを分ける中、小田急は一発で鍋パーティーとおせちの両方楽しめる画期的なセットを開発した。顧客の行動をきちんと考えた結果辿り着いた秀逸な商品である。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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