「巣ごもり消費」の商機をとらえろ!:ハインツの内食対応に学ぶ

2009.11.12

営業・マーケティング

「巣ごもり消費」の商機をとらえろ!:ハインツの内食対応に学ぶ

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 テレビゲーム・インターネット・通信販売・自宅での食事などに関連した消費が活況を呈している。いわゆる「巣ごもり消費」である。関連した株の上昇を期待して「巣ごもり銘柄」なる言葉も誕生している。では、その市場環境の変化を商機とするにはどうすればいいのだろうか。

 「巣ごもり消費」は昨秋の米国発の世界的な経済危機以降から注目されたキーワードであるが、一方でここ20年程度をかけて緩やかに育ってきたトレンドだという説もある。(※1)バブル崩壊以降、華美な生活への反省と、「賢い消費者」であろうとする傾向が節約志向の高まりに行き着いたと考えれば確かに納得感のある話である。さらにここ10年あまりで急速に高まった環境意識と、その象徴的なキーワードである「もったいない」も堅実消費を後押しする要因になっているかもしれない。
 「巣ごもり」して「堅実消費」する姿の筆頭が「内食」であろう。スーパーでは安価な食材の「もやし」が品切れする店が続出したり、土鍋がブームになったりとその傾向が一層明確になっている。

 米国での面白い事例がある。「キャンベルスープ」の話だ。
 キャンベルスープは世界120ヶ国で販売されている米国の代表的なスープ缶である。その赤と白のパッケージはアンディー・ウォーホールの作品でも有名だ。1929年に起こった世界恐慌の当時、多くの米国人がキャンベルスープをすすって飢えをしのいだという話もある。
 その世界恐慌と今回の経済危機を重ね合わせて、一部の投資家がキャンベルスープの株を買い入れた。しかし、2009年4月時点で同社のスープの売上げは15.5%も減少したという。(※2)米国株式市場の最新情報を伝えるMarketWatchは、より安価で簡便な電子レンジ食品の存在を挙げ、「1930年代と今日では状況が異なる一つの証左である」としている。

 では、日本はどうだろうか。当然、単純に缶スープをすすって飢えをしのぐことはしないだろう。かといって、簡便な電子レンジ食品だけで内食を済ますだけの姿も、現在のトレンドからは見えない。
 その一つが「内食ブームで調理具にこだわる主婦が増えている」という事例からも見える。(※3)東京・浅草のかっぱ橋道具街でプロ用調理器具を買い求めに来る主婦が増えているという。内食は節約のためだけの行動ではない。ましてや飢えをしのぐという行為ではない。節約を前向きにとらえ、むしろそれをイベント的に楽しんでいる側面が大きい。

 これは一つの価値観の転換であるといってもいい。かつての華美な消費の時代、様々な外食産業が活況を呈した。贅を尽くした料理を空間プロデューザーといわれた人々が工夫を凝らした店内空間で食した。当時、それはサービスを買う「コト消費」のようにいわれた。しかし、考えてみればそれらは「贅沢な料理」「奇抜な空間」という「モノ」に対価を払っているだけの、実は「モノ消費」だったのではないだろうか。
 では、今日の内食はどうなのか。本当にもやししか食べられないような経済状況ではない人までもが、もやしを買い求める。それは、節約料理のレシピ開発という自分で考えた一つのイベントを楽しんでいるのではないか。プロ用調理器も、単なる日々の食事を作る料理を楽しいイベントに変える道具として購入しているのではないか。だとすれば、「もやし」や「プロ用調理器」というモノは「コト消費」のために購入されていることになる。
 「モノからコトへ」と言われて久しいが、本格的な移行が意外な形で加速しているように思える。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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