東京、大阪を中心に、百貨店の大型リニューアル投資が計画されている。しかし、一般的なリニューアル効果は、半年程度しか持続しない。 むしろ、「検索できる百貨店」を実現するためのITリニューアルが必要ではないか。
3.IT活用非店舗販売のビジネスモデル
多くの百貨店は、都心の一等立地に位置している。どんなモノでも売れる立地であるだけに、それに甘んじてはいないだろうか。
百貨店の人は、売上不振の理由を商品に転嫁する傾向が強い。「商品が悪いから売れない」「もっと良い商品を品揃えすれば売れる」「どこかに売れる賞品があるはずだ」・・・。商品に責任を転嫁する限り、商品以外の問題は見えない。私は、百貨店には良い商品が揃っているという前提に立ちたい。
百貨店には良い商品が揃っている。しかし、その情報が顧客には伝わらない。百貨店の商品情報は、百貨店まで出掛け、一つ一つの商品を自分の目で確認しない限りは分からないのだ。
かつて不動産物件を探すには、自分で町の不動産屋さんを訪ね、一軒一軒の物件を確認する必要があった。しかし現在では、まずインターネットでチェックし、候補物件をリストアップしてから、実際に現場をチェックするという方法に変わっている。
現代人は、あらゆるモノやサービスを購入しようとする場合、まずインターネットで検索するという習慣が身につきはじめている。勿論、百貨店の中心顧客である50歳代以上の人は、インターネットにつながっている率は少ないかもしれない。しかし既に50歳以上の多くが携帯電話を所有している。メールやインターネット接続を経験している人も多いだろう。果てして本当に「年配者だからインターネットなんて関係ない」と断言できるのだろうか。しかも、年々インターネット接続率は高くなるのだ。
これまで百貨店が自宅の顧客に情報を伝える手段はテレビかチラシ広告、電車の中吊り広告等に限定されていた。しかも、ほとんどがセールやイベントの告知であり、入荷したばかりの新鮮な商品を紹介するケースは皆無に近い。百貨店は自宅にいる顧客を店頭まで誘導する手段を持っていないのだ。
考えてみれば、百貨店はコンテンツの宝庫である。数えきれないくらいの商品。店頭には商品知識の豊富な販売員が数多く存在する。仕入れ先に情報提供を求めることも可能である。その情報こそ、百貨店の資産である。しかし、その資産は使われないままに捨てられている。
百貨店が重視している経営指標は、売上、坪効率、納入掛率だ。売場は売上と坪効率を追求し、バイヤーは納入掛率に集中している。組織も商品と売上の管理に集中している。
大きく欠落しているのが、店内の情報管理と情報発信、そのためのメディアの整備である。情報を発信することで顧客を集め組織化する。その顧客管理が重要なのだ。
百貨店が行っている顧客管理とは、多くの場合、ハウスカードの発行とポイント管理、せいぜいがセールの告知に過ぎない。商品を買ってくれた顧客を管理するという発想であり、潜在的顧客の開拓ではない。また、個々の顧客に必要な情報を発信するための管理でもない。結果の管理であり、プロセスの管理ができていないのである。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24