日本初、市民病院、民間移譲実現への道のり 第2回

2009.10.15

開発秘話

日本初、市民病院、民間移譲実現への道のり 第2回

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

全国で市民病院問題が噴出している。すでに廃止を決めた自治体、大幅な規模縮小を図る自治体がある。そんな中、民間移譲での再生を企画、自ら再選挙に打って出ることで信を問い、強力に改革を進めているのが樋渡武雄市長だ。その革新的な改革プロセスを紹介する。

                                   
■まさかの前市長の再出馬

「医師会を敵に回すと大変だぞとは、古巣の総務省からもさんざん言われていました。でもこっちとしては議会できちんと議決までいたいだいているわけです。市民病院問題を解決するためには、絶対にここで引いちゃダメだと腹をくくりましたね」

今、手を打たないと市民病院は遅かれ早かれ間違いなく潰れる。それは市民から救急医療機関を奪うことを意味する。万が一のときに遠方の病院まで運んでいたのでは、助かる命が失われる恐れさえ否定できない。

「大げさじゃなくほんとに人の命がかかっているんだから。この問題を解決するためには市長職を賭けるべきだと決断しました。もちろんリコールになるのは想定済み。ただ何よりうれしかったのは、一番そばで見ていて、僕の真意をよくわかってくれている市の職員たちがみんな、すごく心配してくれたことですね」

市長の決意が固いと見た医師会は妥協案を出してきた。まず地方公営企業法の全部適用から独法の検討と、医師会の意向反映性の高い順に検討すべきで、その後に民間移譲を考えてはどうなのかと。もちろん樋渡市長も最初から民間移譲ありきで議論を進めたわけではない。独法化も十分に検討された結果の決断なのだ。

「議論を尽くしている内に、独法は責任の所在が曖昧になるからダメだと考えるようになったのです。市場が成長しているときは独法でも良いんですよ。みんな和気藹々、いろんな知見を取り入れて成長していけるから、責任の所在が問われることはない。ところがパイが縮小している状況にも関わらず、無責任状態の組織となればガバナンスが働かないのは目に見えている。第三セクターの二の舞は避けなきゃならない」

いよいよリコールとなる寸前、樋渡市長は自ら辞職し再選に打って出た。勝算はあったのだ。再選挙では、まず対立候補が出るはずがない。すなわち信任選挙となる。市長就任以来、樋渡氏が武雄のために走り回って実現してきた数々の成果を考えれば、再選は間違いないところだ。

「ところがですよ、医師会と民間移譲反対グループが手を組んで前市長を担ぎ出してきた。これには本当にびっくりしたというか、開いた口がふさがらないというのはこういう事なんだなって。一体、僕は誰の尻ぬぐいをしてるんですか。前市長が残していった負の遺産を何とかしようとがんばっているのに。医師会も医師会ですよ、そもそも市民病院引き受けの時には、前の市長に散々反対したはずなのに、今度は手を結ぶ。もう無茶苦茶というか、何でもありの世界じゃないですか」

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