電卓化するパソコンはどこへいく?

2009.10.13

営業・マーケティング

電卓化するパソコンはどこへいく?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ネットブックといわれる低価格ノートPCのシェア上昇が止まらない。パソコン市場はこの先どこへ行くというのだろうか。

 普段はPCのデスクトップアクセサリや、携帯電話にも計算機能が組み込まれているため、電卓がなくとも用に足りてしまうが、帳簿や家計簿の整理をしようとふと探すと見あたらなかったり、壊れていたりする。買いにでかければ、文房具店や量販店の片隅のコーナーで、ビニールの袋に入れられて、壁から吊されて売られている。かつて高嶺の花であった電卓という存在からは考えられない姿である。まさに、今日、パソコンも同じような存在になりつつあるのだといえる。
 電卓の機能的進化は、Wikipediaの記述によれば1973年頃までの小型化、低電力化による電池駆動化、76年の太陽電池搭載や、79年頃、実用上必要な小型薄型化の完了など、70年代に既に終了している。

 ノートパソコンも同様だ。ノートパソコンを購入するにあたって、消費者が手に入れたいと考える「中核となる価値」は、パソコンの基本である、文書の作成とブラウジングやメールができること。それを「持ち運んで便利に使える」ことだ。そして、その「中核」を実現するための製品の「実体」は、「小さくて、軽くて持ち運びに便利」なことである。パワーポイントの複雑なプレゼンテーションをつくるのは少々厳しいが、それらの必要な機能は既にネットブックで十分事足りてしまう。となると、次の段階は、それがなくとも「中核となる価値」は損なわれないが、あればより魅力的な製品となる要素としての「付随機能」での勝負となる。例えば、ノートパソコン全般でカラーバリエーション化が進んでいる。パソコンが何色であっても中核価値には影響がないが、在庫リスクをおしてでも消費者に訴えかける魅力は既にそれぐらいしかなくなっているのである。そのカラーバリエーション化は既にネットブックにも波及しており、各社、様々な色展開をしている。

 付随機能まで差別化要素を失えば、次に来るのはさらなる価格競争である。パソコンがビニール袋に入れられて、壁からぶら下げられて売られる日も遠くはないかもしれない。
 そんな中で、各社の生き残りの工夫が見てとれる。付随機能の強化でギリギリいっぱいいっぱい頑張っているのがヒューレット・パッカードだろう。HP Mini 110 シリーズでデザイナーコラボレーションをシリーズ展開している。2009年1月にニューヨークの中国系ファッションデザイナー、ヴィヴィアン・タムとコラボして、筐体やキーボードまでも全部が真っ赤で、天板に鮮やかな芍薬の花が大きく描かれたモデルを発売した。10月にはその第2弾として、オランダのプロダクトデザイナー、トード・ボーンチェが得意の動植物の陰影を用いたボタニカル(植物)デザインの真っ白なモデルを発売開始した。
 シャープはMebiusの夏モデルにタッチパッド部分に既に光センサー液晶を搭載。さまざまな情報や画像を表示したり、タッチ操作や手書き文字入力したりできるようにした。タッチパットが従来型でも用に足りるが、新技術で付随機能の強化を図ったのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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