自販機戦国時代 コカ・コーラの電子マネー戦略を考える

2009.10.07

営業・マーケティング

自販機戦国時代 コカ・コーラの電子マネー戦略を考える

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 街を歩けば視界に2台や3台が必ず目に入る飲料の自販機。推計で全国に約220万台※が設置されているという。しかし、その増減を見ると、ここ数年は変化がなく飽和状態であることが分る。そんな市場環境の中で、日本コカ・コーラとJR東日本は「JR東日本の営業エリア内でコカ・コーラシステムが設置している自販機のSuica対応の本格展開を開始した、と発表した」(10月6日、さくらフィナンシャルニュース)という。

■縮む市場での勝ち残り戦略
 
 自販機市場だけでなく、全産業に共通したことであるが、少子高齢化の進行は劇的なマーケット縮小を意味する。縮む市場においては、規模はそのまま弱みになる。築き上げてきた資産が負債化するのである。飲料販路としては、自販機が約40%のシェアを占めている。チャネル間の戦いも無視できない。コンビニは約25%のシェアである。そうした環境の中で、いかに自社のシェアを維持できるかを考えた時、日本コカ・コーラは電子マネー対応強化に踏み切ったのではないだろうか。
 自販機の利用に対する不満をあげるとすれば、何があるだろうか。一つは「小銭」であろう。電子マネーの発達した昨今、買い物をしてジャラジャラと小銭が返されて財布がパンパンになるようなことは自販機ぐらいではないだろうか。にもかかわらず、相も変わらず、自販機には「新札使えます」とのシールがあるだけだ。千円札が夏目漱石から野口英世に変わったのは2003年のこと。もう6年間も何の変化が自販機にはないのだ。
 もう一つの不満をあげれば、コンビニチャネルと比べると価格に差があったり、自由度がないことだろう。例えば清涼飲料はコンビニでは税込み147円、自販機では150円と釣り銭の関係で一物二価となっている。また、コンビニではキャンペーン的に税込み126円などの値引き販売もなされている。自販機の価格硬直性がどうしても際立ってしまう。こうした問題は、電子マネー対応で解決ができる。電子マネー決済の場合の価格と硬貨支払いでの二重価格にはなるが、多くの人が1枚や2枚は電子マネーを持っていると考えれば、そちらを利用するだろう。

 日本コカ・コーラはこうした市場環境の変化の中で、まずは顧客の支払いに対する不満の軽減と、低価格機やコンビニチャネルとの価格競争に柔軟に対応できるインフラづくりとしてSuica対応を決断したのだと推測できる。
 また、同社はキャンペーンによる魅力づくりにも腐心しているようだ<2009年11月2日(月)からは、コカ・コーラ自販機でSuicaを利用して飲料を購入した人を対象にプレゼントがあたる、共同プロモーションを実施する>(さくらフィナンシャルニュース)多分に他社自販機だけでなく、コンビニとのチャネル競争を意識した展開であろう。
 今後の展開としては、<2009年12月までに首都圏を中心に約1万台のコカ・コーラ自販機へ対応を拡大、更に2010年12月末までに3万台のコカ・コーラ自販機へ対応を広げていく。また2011年以降も継続的な導入を実施していくという>(同)

 同社の取り組みは、他社にも大きな影響を与えるだろう。自販機という、普段あまり注目されにくい世界でも、勝ち残りをかけた激しい戦いが始まったのである。

注※記事概要に記載した約220万台は、10月6日日経新聞掲載の各社保有台数の積み上げでは324万台と試算されている

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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