事業部門売却という選択枠

2009.07.02

経営・マネジメント

事業部門売却という選択枠

清水 美帆
株式会社ビジネス・ブローカレージ・ジャパン 代表取締役

「事業譲渡」というM&Aスキームを使った部門売却について解説します。

2つの環境変化


M&A仲介事業をしていていると、景気の動向を肌で感じることが多々あります。昨今の出来事でいえば、我々を取り巻く環境が少しづつ、且つ大きく変化していったということ。まず第一に、米国サブプライムショックを引きがねに始まった世界金融危機。M&Aの観点でいうと、これまで積極的に買収していた海外ファンドや、大企業の買い控えなどに影響しました。また銀行の貸し渋りなどに起因して、資金調達は引き続き厳しい状態が続くでしょう。第二に、日本でも若いベンチャー経営者が出口戦略として、M&Aを考える様になってきている事です。IPOが困難になった昨今、上場ではなくてM&Aを考える経営者や、売却益で新事業を立ち上げたいと語る経営者は実に多いのです。弊社のお客様でも、売り手、買い手の両方に、若手経営者は多く目立ちます。売り手は、自分は立ち上げに向いていて、事業をある程度の所まで育てたので、後は経営に長けた者に事業を譲り、今以上に大きく育てていってもらった方が、会社にとっても社員にとっても幸せという考え方です。売却対象事業の従業員の雇用という面で言えば、通常のM&Aでは、社員の雇用はこれまでと同条件、又は、これまでの待遇よりも良くなる事から、売却された企業の社員は「M&Aされて良かったと思う」と答える事が多いのです。買い手は、新規事業立ち上げの苦労やリスクを熟知しているのと、「時間を買う」というM&Aの一番のメリットを理解し、事業拡大を夢に描いて、積極的に買収をしかけています。

売り案件の増加と実状


この様な環境変化の中、M&A案件は確実に増えています。ただ、一方で、案件化せずに事業の成長に合わせて、売却の時期を待っている案件があるのも事実です。例えば、売却するタイミングが早すぎたり、もう少しふんばって事業を立て直せば、もっと高い金額で売却できるというものもあります。通常、M&Aでは、直近3カ年分の財務資料を参考にします。店舗事業の場合、それ以下でも十分売却の対象になる事はありますが、売り手、買い手の双方にとってハッピーなのは、ある程度、収益性のある事業というのが判る様になってから譲渡するというのが理想的です。「売り時」というのは、必ずしも絶対的なものではありませんが、業績が好調なうちに相手探しを始めた方が、好条件で売却できるのは確かです。M&Aにおいて、タイミングというのは非常に重要なポイントです。「手放すのがもったない」と思える位の業績が出ているうちに、良心的で経験豊富な仲介会社にまずは相談してみる事をお薦め致します。

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株式会社ビジネス・ブローカレージ・ジャパン 代表取締役

JMAA認定M&Aアドバイザー(CMA)

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