「スキマなし」。マクドナルドのプロモーション戦略

2009.06.30

営業・マーケティング

「スキマなし」。マクドナルドのプロモーション戦略

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

「マックでDS」を開始し、期間限定で「日本バラ色計画」を展開。これらのプロモーションには、全く「空白を作らない」というマクドナルドの狙いが隠されている。

売上げ・利益を確保するには、客数を増し、客単価を上げ、来店頻度を高めることが基本の「き」である。マクドナルドのプロモーションはそれがカッチリと励行されているのだ。

■昼下がりの風景
不景気でファストフードが活況だ。マクドナルドはとりわけ快走中である。その店内を昼下がりにのぞいてみると、100円メニュー、120円メニューを組み合わせて食べたり、テイクアウトしているランチ価格抑制派の姿がずいぶんと目に付く。この人々が、マクドナルドの快進撃の一翼を担っているのは間違いない。しかし、低価格ランチ客のみではダメなのだ。もっと幅広い客層を確保し、さらに、その客がたまにではなく頻繁にきてくれるようでなくては。なぜなら、この顧客層は何もしなくても来店してくれる代わりに、客単価が低い層だから。
かつてマクドナルドは価格破壊によって「デフレ時代の勝ち組」と言われたが、その後ブランドイメージの低下と収益性の悪化で長く苦しんだ。その経験から、低単価・低収益メニューと高単価・高収益メニューのバランスを取る、マージンミックスに最も慎重になっているのだ。

■「マックでDS」http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2009/promotion/promo0615.html
そんなターゲットの一つが親子連れだ。<無線通信装置を使い、市販ゲームのキャラクターの配信、スタンプラリー、市販DSソフトの体験版配信>
継続的なプロモーションであるが、6月19日から7月17日の期間第一弾は、DSのポケモンソフトを持参すれば、オリジナルキャラクターである、幻のポケモン「ジラーチ」の配信が受けられる。さらに<来店するごとに自分のDSへキャラクターが貯まっていきます>という、スタンプラリーも開催だ。
DSやポケモンにはまっている子供を持つ世帯は多い。たぶん大変な騒ぎだろう。「ジラーチもらいに行こう!」「またマクドに行って、キャラクターをもらおう!」と来店頻度が高まったこと、必定ではないだろうか。
お昼ご飯を作るのがちょっ面倒なお母さんは子供に促され「まぁ、しかたないわね」と。お父さんも一緒の時は、手軽で安価なレジャーとして「じゃぁ行こうか」と子供の利害とも一致する。家族2人~3人という高頻度の来店客確保ができるわけだ。

■「日本バラ色計画」http://www.mcdonalds.co.jp/quarter-pounder/
<“バラ色でいくぜ”という「BIG MOUTH!」を掲げ「クォーターパウンダー」を食べて、不況で暗くなっているニッポンを明るく幸せな“バラ色”に塗り替えていこうという計画>だという。
まぁ、平たくいえば、「クォーターパウンダーを食べましょう」と言っているだけなのだが、その持って回ったやり方が出色だ。
まずはオープニングイベントで、人気モデルの益若つばさとタレントの桃華絵里が登場。「バラ色缶バッチ」と「バラ色Tシャツ」を披露。さらに安室奈美恵を起用した超クールなCM・バラ色でいくぜ宣言「VS.」篇を展開。明らかに女子狙い。
高価格メニューであるクォーターパウンダーは、低価格メニューの利益率を補完するマージンミックスの要だ。しかし、メイン購買層は20代男性、サブが30~40代の男性。確かに女子には手を出しにくいボリュームを感じさせる。そこでこの、バラ色だ。
「バラ色Tシャツ、って本当にこんなの着られるの?」と大人の男性から見ればちょっと躊躇しそうなデザインだが、そこは夏を迎えるこの季節。クォーターパウンダーにノリで手を出す若い女性、主に学生の心理を突いているといっていい。
部活に、夏フェス、海に山に、花火に祭りになんやかんや。そんな楽しい夏の日々に着用すれば仲間内でウケること間違いない。さらに、シャツが欲しくて、食べまくるほどに貰えるバッチ。かばんに無数についたピンクのバッチもまた、ウケる。「なにそれ。あんた食い過ぎだよ!」というコミュニケーションも設計されているように思える。
黙っていても食べてくれる男性層はおいておいて、クォーターパウンダーにハマッてくれそうな元気な女子のハートをつかむ戦略が「バラ色」なのだ。無論、その女子につられて一緒に食べる男子の取り込みも狙っているのは間違いないが。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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