「これがなくなったら、人間が生きていけいない」というものは何かと問われたら、あなたは何と答えるだろうか?かのアインシュタインは、「もし、ハチが地球上からいなくなると、人間は4年以上生きられない」と予言した。
減少の説明になっているとは言えない。そこで注目されているのが、上記の①~
⑤のような複数の要因が絡み合って、ミツバチの免疫力が慢性的にかつ世代を超
えて低下したとする「ストレスによる衰退説」である。免疫系の異常は、崩壊し
ていた巣に残っていたハチを調べたところ、15種もの病原が体内に保持されて
いたという調査結果から明らかにされており、何かしらの原因でハチの免疫系が
異常な状態にあることは確認できている。そして、その原因とは人間世界の資本
主義経済に組み込まれたことによるストレスだと言うのだ。象徴的な例で言うと
2000年代、カリフォルニアでは、アーモンド栽培が成功し「アーモンドゴール
ドラッシュ」とも呼ばれる状況となった。そしてより生産量を高めるために、ア
ーモンド農家は、商業養蜂家からミツバチの巣箱を借り、畑から畑へとミツバチ
を移動させ、受粉させた。そのためには、ミツバチ用のたんぱく質サプリメント
を投入するなど「ミツバチを働かせるための」投資も惜しみなく行われた。しか
し、エネルギー分を投入したらその分だけ働くほどハチは合理的にも単純にも生
きていない。受粉昆虫は、二種類以上の花や花粉から総合的なエネルギーを調達
するのを好むと言われているが、偏重な栄養分を強制的に摂取させられ過重にア
ーモンドの受粉を担わされた結果、ミツバチはその役務も生きることも放棄した
のだ。
ミツバチは、卵を産み落とされた場所によって、繁殖が許される女王バチと働
きバチに自然と役割分担がなされる。そして、働きバチも幼虫を育てるハチと花
粉や蜜を幼虫のエサに変える貯蔵ハチ、外部から花粉や蜜を調達するハチの大き
く3つに分けられる。働きバチはこの三段階を誰の指図を受けるまでもなく、自
ら気づいてその役割を引き受けるようになり、最終的には、調達ハチとしてその
生涯を終える。1つの巣で5万匹のハチがそれぞれ1mgと言われる脳で個別の決
断を下しながらも、群れ全体では調和と知恵が保たれ
ひとつの生命体「超個体」として機能してきた。どの個体の意志決定や指示を受
けずとも精妙な自己組織化力を発揮してきたハチが、巣を放棄し、失踪するとい
うことはこの超個体の死、すなわちハチ一家の死を意味するのだ。
ミツバチ達をそこまで追い詰めた原因を探るには、最初の問題設定が重要であ
ることは言うまでもない。もし、本当にCCDの原因がストレスによる衰退であ
り、その結果、ハチが巣の放棄を起こしているとしたら、短期的な人間都合の需
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