ミツバチ不足問題から考える人間のエゴとは

2009.06.30

経営・マネジメント

ミツバチ不足問題から考える人間のエゴとは

井上 卓哉

「これがなくなったら、人間が生きていけいない」というものは何かと問われたら、あなたは何と答えるだろうか?かのアインシュタインは、「もし、ハチが地球上からいなくなると、人間は4年以上生きられない」と予言した。

減少の説明になっているとは言えない。そこで注目されているのが、上記の①~

⑤のような複数の要因が絡み合って、ミツバチの免疫力が慢性的にかつ世代を超

えて低下したとする「ストレスによる衰退説」である。免疫系の異常は、崩壊し

ていた巣に残っていたハチを調べたところ、15種もの病原が体内に保持されて

いたという調査結果から明らかにされており、何かしらの原因でハチの免疫系が

異常な状態にあることは確認できている。そして、その原因とは人間世界の資本

主義経済に組み込まれたことによるストレスだと言うのだ。象徴的な例で言うと

2000年代、カリフォルニアでは、アーモンド栽培が成功し「アーモンドゴール

ドラッシュ」とも呼ばれる状況となった。そしてより生産量を高めるために、ア

ーモンド農家は、商業養蜂家からミツバチの巣箱を借り、畑から畑へとミツバチ

を移動させ、受粉させた。そのためには、ミツバチ用のたんぱく質サプリメント

を投入するなど「ミツバチを働かせるための」投資も惜しみなく行われた。しか

し、エネルギー分を投入したらその分だけ働くほどハチは合理的にも単純にも生

きていない。受粉昆虫は、二種類以上の花や花粉から総合的なエネルギーを調達

するのを好むと言われているが、偏重な栄養分を強制的に摂取させられ過重にア

ーモンドの受粉を担わされた結果、ミツバチはその役務も生きることも放棄した

のだ。

ミツバチは、卵を産み落とされた場所によって、繁殖が許される女王バチと働

きバチに自然と役割分担がなされる。そして、働きバチも幼虫を育てるハチと花

粉や蜜を幼虫のエサに変える貯蔵ハチ、外部から花粉や蜜を調達するハチの大き

く3つに分けられる。働きバチはこの三段階を誰の指図を受けるまでもなく、自

ら気づいてその役割を引き受けるようになり、最終的には、調達ハチとしてその

生涯を終える。1つの巣で5万匹のハチがそれぞれ1mgと言われる脳で個別の決

断を下しながらも、群れ全体では調和と知恵が保たれ

ひとつの生命体「超個体」として機能してきた。どの個体の意志決定や指示を受

けずとも精妙な自己組織化力を発揮してきたハチが、巣を放棄し、失踪するとい

うことはこの超個体の死、すなわちハチ一家の死を意味するのだ。

ミツバチ達をそこまで追い詰めた原因を探るには、最初の問題設定が重要であ

ることは言うまでもない。もし、本当にCCDの原因がストレスによる衰退であ

り、その結果、ハチが巣の放棄を起こしているとしたら、短期的な人間都合の需

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