二つの『三つの視点』

2007.08.16

仕事術

二つの『三つの視点』

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

「そんなの簡単じゃん、上から見りゃいいんだよ」。サッカー・スコットランドリーグでMVPとなった中村俊輔選手の言葉。イタリアで車一台分ギリギリのスペースに、彼がスパッと一発で車を止めた時の話だ。

車体と空いているスペースの関係、ハンドルを切ることによってスペース
と車の位置がどう変わるかは、確かに上から見るとよくわかる。といって
もビルの屋上に登って車を遠隔操作、なんて話ではもちろんない。

運転席にいながら中村選手は、車の位置と空きスペースの位置を頭の中で
俯瞰的にイメージングできる。『鳥の目』である。この鳥の視点を中村選
手はゲーム中も意識しているという。イメージとしては次のような感じだ
ろう。

自分のところにボールが来そうな瞬間、彼は一気にフィールドの上10メ
ートルぐらいまで意識を飛ばす。その高さからなら敵味方全プレイヤーの
動きを一望にできる。穴はどこにあるのか、穴に対して味方の誰がどう動
こうとしているのかが『見える』。見えるから、その味方が求めるような
パスを出すことができる。ファンタジスタのプレイだ。

サッカー選手の視点の良さでは中田選手も有名だった。ただし彼の場合は
ボディバランスが優れているから、常に視線がぶれないといった誉め方だ
ったと記憶する。いわゆる『虫の視点』、つまり現場情報を的確に掴む視
点だ。

加えて確実に戦いに勝つためにはもう一つ『魚の視点』が必要だ。すなわ
ち全体的な流れを読む視点である。水面ではなく、水面下の動きへの目配
りが求められる監督の仕事だろう。

チームが有機的に機能するためには役割分担が必要だ。『鳥の目』に優れ
る中村俊介のようなプレイヤーがいれば、彼には俯瞰的な視点からのプレ
イ、つまりゲームメイクを任せればいい。現場で指示を出しメンバーを鼓
舞する役目は中田のような選手の仕事、そして監督がゲームの大局的な流
れを読んで采配する。あとは個々のプレイヤーが求められる役割をどれだ
けきちんとこなせるか。勝負の分かれ目はここに極まる。

ビジネスにおいても、これと同じようなフォーメーションを組める人材が
揃っているのが理想だ。トップには『魚の目』、ナンバー2で実務を取り
仕切る人間には『虫の目』、アイデアマンには『鳥の目』。経営陣にこん
な人材が揃っている企業は強いだろう。

実際にはトップまで上り詰める人物は、三つの目を兼ね備えていることが
多い。なぜならトップに至るまでの過程で、三つの目それぞれを要求され
る局面が必ず巡ってくる。そこを乗り越えた人物がトップにたどり着ける
のだ。いずれの視点においても常人よりも優れていて、なおかつ最終的に
は『魚の目』がずば抜けていること。これがトップの条件なのかもしれな
い。

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