商社マン しんちゃん。 走る! (8)

2009.06.06

営業・マーケティング

商社マン しんちゃん。 走る! (8)

三宅 信一郎
株式会社BFCコンサルティング 代表取締役

~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。

第二章 一人前への長い道のり

「ネタがないんだったら、これでも売り込んでこい!」

圧延前の工程としてアルミニウムをスラブという形状にするための
鋳造工程というのがあり、その鋳造機にアルミニウムを入れるため
アルミニウム地金を溶解するための設備であった。

宮田は、宇都宮までの電車の中で、そのカタログを何気なくぺらぺら
とめくって、初めて目にする機械のスペック(仕様)と特長なりを
頭に入れて、自分なりのセールストークを考えようと必死だった。

鹿沼工場には製造部、品質保証部、研究開発部、設備部、資材部
など色々場部署があった。

通常、機械や設備物、サービスを工場に売るためには、色々な部署
とのコネクションを構築し、情報を収集しなければならない。

関が以前この工場から受注した150億円もの圧延機となると、
工場だけでなく、本社の調達部、本社の担当役員はもちろん、
社長や会長なども重要な関係者となって、受注にいたるまでに
押さえておくべき関係者は膨大な数となり、またそのレベルが
高度になってくる。

宮田は、守衛所で入門証をもらって、まずは資材部のところに足を
運んだ。

そこには、大勢の地元含む建設業者や機械卸、設備メーカーなど色々
な業者が、資材部との打ち合わせをしようと商談コーナーにたむろ
っていた。

ここで、じっと待っていても、何も起こらないという予感はしていた。

意を決して、業者の待ち合わせ場所と事務所を仕切るキャビネット
越しに身を乗り出し、何人かの設備部の方々に向かって、声を出した。

「す、すみませーん。大日本商事の宮田と申します。
ちょっとよろしいでしょうか?」

宮田の呼びかけに対して、誰一人として応答しようとしない。

応答するどころか、宮田に一瞥さえ向けることもなかった。

なんら変わることなくもくもくと事務作業をしているシーンとした
事務所に、宮田の声だけがむなしく響き渡ってとても恥ずかしく
思った。

< なんやこれ・・・。正直メッチャはずかしいやんけ。俺。>

先日のキックオフの際、関と親しそうに話していた設備部圧延担当
の峰山課長がちょうど前を横切ろうとしていた。

彼とならなんらかの話のとっかかりが出来るだろうと考え、思い
切って声を掛けてみた。

「す、すみません。いつもお世話になっております!
大日本商事の宮田と申します。 関の下でやっております!」

「はい。それで?」

「・・・・」

「ちょっと今、忙しいから」

「あ、ちょっ、ちょっと待って下さい。今日は、最新鋭の溶解炉の
カタログを持ってきました。 この溶解炉はインダクションヒー
ティングシステムという業界初であります電磁誘導方式というのを
採用している溶解炉でして、通常より、オペレーションコストの
大幅な削減、かつ操業時の安全性に優れ・・・・」

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三宅 信一郎

株式会社BFCコンサルティング 代表取締役

事業力強化・新規事業開発・創業支援コンサルタント 自動認識基本技術者 (JAISA:(社)日本自動認識システム協会)認定

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