テレビの三つの大罪

2009.05.23

ライフ・ソーシャル

テレビの三つの大罪

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

先日、自分のブログで『テレビの二つの原罪』と題したエントリーをアップした。これを読んでいただいたコメント、最近読んだ本の内容などを合わせて、もう一度考え直してみた。テレビの原罪はどうやら三つあるようだ。

そうした価値観に基づいて制作された「おもしろい」番組を見続けているうちに、人はそれが「おもしろい」ものだと思うように洗脳されるだろう。少し飛躍があるかも知れないが、それこそが「価値あるもの」と考えることだってあるだろう。

だから、テレビの影響をより受けやすい(=価値観の確立していない)若い人たちほど、東京へ行きたい、とおもうのではないか。さらにいうなら、そうした若い人に残ってもらいたいがために地方都市は軒並み東京ライクな風景になってしまったのではないか。

脳を休ませてしまうテレビ

さらにもう一つ、恐ろしい指摘がある。テレビを見ていると、脳の処理能力が楽をする。楽をすると、人は本来持っている能力を失っていく。クルマが人間の歩く力を弱らせてしまったように。テレビ三つめの大罪とは、人間の脳の能力を弱らせることだ。

なぜ、テレビを見ると脳が楽をするのか。この問いに答えるには、テレビで時々問題になるサブリミナル効果の話が参考になる。サブリミナルとはテレビで放映されるフィルムの中のわずか1コマに、本来の内容とはまったく関係のない絵を差し替えていれることをいう。

サブリミナルは問題があるとして、この手法をテレビ番組で使うことは禁止されている。なぜ、問題あるかといえば効果がある可能性があるからだ(現時点では確実に効果があると言い切れるだけの実証データはないらしい)。

ただ経験的には効果がありそうだということで意見はほぼ一致しているようだ。つまり脳はテレビ番組から与えられる情報量ぐらいは潜在意識下で楽に処理している可能性が高い。逆にいえば、同じ京都の風景を対象としても、リアルにその場所に立って見るのとテレビで放映された画面を見るのとでは、伝わってくる情報量には莫大な差があるのだ。

ということは、テレビを見ていると脳は明らかに楽をしていることになり、楽をしている時間が長ければ長いほど(=脳が楽をすればするほど)脳が本来持っている能力は衰えていくことになる。

人は持てる能力の10分の1も知らずに死んでいく

「人間というのは、自分の才能の十分の一も知らずに死んでしまう動物なんだ」(『マイ・ビジネス・ノート』今北純一/文春文庫、2009年、159ページ)。

逆にいえば、人間の才能は自分が思っているよりもはるかに大きく豊かなのだ。その才能を使わないのは余りにももったいないではないか。とりあえずテレビを見る時間を減らす、絞る。それだけでも脳は楽をしなくなる。視覚、聴覚に過度に依存するのではなく、嗅覚、味覚、触覚を意識して使う。そのことによりおそらくは、人が本来持っている感覚は研ぎ澄まされ、第六感を養うこともできるだろう。

普段の暮らしの中で、少し心がけを替えるだけでもっと自分の能力を使う生き方がきっとできる。子どもは特に、大人だって決して手遅れなんかじゃない。始めるなら、今からだ。

※参考
『現代人のための脳鍛錬』川島隆太/文春新書
『マイ・ビジネス・ノート』今北純一/文春文庫

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