広告の「地産地消」を考える

2009.05.19

営業・マーケティング

広告の「地産地消」を考える

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

マスメディアの功罪とはなんだろうか。高度成長期においては国民の消費意欲を大いに刺激し、GNP上昇に貢献した。しかし、もはや時代は変わった。活字メディアの苦戦が伝えられて久しい。テレビもほとんどの局が赤字。広告の二強、電・博もしかり。・・・と大きく構えるつもりはないけれど、新しい動きを模索しなければならないのは間違いないだろう。

マスメディアの功罪を挙げるなら、その一つは、全国津々浦々に一律の価値観を流布したことだろう。功は冒頭に記したとおり、消費刺激によって経済を成長させたことが挙げられよう。罪は狭い国土、単一民族に近い日本国民を金太郎飴的な存在にしてしまったことである。
時代は変わり、消費志向は細分化し、金太郎飴は様々な価値観を持ち、各々独自の消費性向を持つようになった。しかし、マスメディアだけが相も変わらず一律な価値観を振りまいている。東京発の価値観を全国津々浦々に発信し続けている。その影響を受けていないのは、京都・沖縄ぐらいではないかとあるマーケターは語る。筆者はそれに、独自のテレビ番組も多い大阪ぐらいは加えていいのではないかと思うが、いずれにしても少数派であることには同意する所である。

その京都で気になる広告を目にしたのは、今年の初め。
「ますますつながりますえ」。
市バスの車内にて。交通広告に目が引き寄せられた。図のように、携帯のアンテナを模したKYOTOのデザインがユニークだ。もう一方では、地元のパン屋さんを取り上げて紹介していた。このキャンペーンは現在もポケットティッシュの街頭配布などで、息の長い展開を続けているという。
これが、地場の企業の広告であれば珍しくはないだろう。広告主はNTTドコモである。かつて地域会社展開をしていた時代は、各地が競って独自キャラクターによる広告展開を行っていたが、地域会社統合後は広告も全国統一となった。現在は山崎努、成海璃子、堀北真希、松山ケンイチ、堤真一、劇団ひとりといった幅広いスターが活躍するCMを流している。そんな、ゴージャスな展開をする一方で、地域に根ざした展開を地味に行っているとは、何とも意外であった。

「地産地消」とは、「地元で生産されたものを地元で消費する」という意味であり、食料自給率の向上に向けた国の取り組みである。
しかし、京都におけるドコモの広告展開を見た時、筆者は「広告の地産地消」という言葉が思い浮かんだ。地産地消の取り組みにおいて、国は基本計画の中で、地域での生産・地域での消費という骨格以外にももう一つの狙いを示している。それは、活動を通じて生産者と消費者を結びつけ、お互いが「顔の見える、話のでできる」関係の中で地域の食料の売買ができ、関連産業も活性化する環境を作ることだという。

「ますますつながりますえ」。
売られている携帯電話は全国共通のものだ。しかし、地域ならではの言葉で語りかけ、その地の消費者にRelevant(ぴったり)と思わせる展開をしている。「顔の見える、話のでできる」関係を構築しようとする意図はズバリ正解ではないだろうか。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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