ファストファッション戦争とファーストリテイリングの真の狙い?

2009.04.20

経営・マネジメント

ファストファッション戦争とファーストリテイリングの真の狙い?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

日本第1号店である銀座店オープン時の長蛇の列が記憶に新しいH&M(Hennes & Mauritz:ヘネス・アンド・マウリッツ)に続き、ファストファッションの黒船が続々押し寄せ、戦争が激化している。しかし、この戦争の影には単純な構図で読み解くことのできない、ユニクロを抱えるファーストリテイリングの戦略が見えてくる。

ところが、その「無名」とされている「オープニングセレモニー」に既に目を付け、コラボ商品を世に出している企業があるのだ。ファーストリテイリング、ユニクロだ。
http://www.uniqlo.com/dip/jp/ (Opening Ceremonyの項をクリック)
何やら、鳶に油揚げのような展開に見えるが、ユニクロの戦略はそんなに矮小なものではない。
今年最大のニュースは「ジル・サンダーとの契約」である。
<UNIQLOがジルサンダー氏とコンサルティング契約締結>
http://www.fashionsnap.com/news/2009/03/uniqlo-jil-sander-2.html

<コンサルティング契約は、ユニクロの商品メンズ/ウィメンズ商品全体にジル・サンダー氏がデザイン・クリエイティブ監修を行い、また特定のコレクションのデザイニングそのものを行うことが主な内容となっている>という。
あの、ジル・サンダーがユニクロの、最近頑張ってはいるけれど、どこか頑張り切れていないシルエットを指導する。中には直々にデザインする。ユニクロ価格でジル・サンダー。何ということだ。ファストファッションなどというコトバが、なんとも言葉通りに安っぽく感じてしまうのは筆者だけだろうか。いや、そうではあるまい。どのブランドとも一線を画してしまう凄味がある。
しかも、<なお、Jil Sander氏は現在、オンワード傘下のブランド「JIL SANDER」からは離れており、今回の契約に「JIL SANDER」ブランドとの関わりはない>という。ここでもユニクロはオンワードを突き放す。

しかし、ここでまた限定的な見方をするとファーストリテイリングの戦略の全体像を見失う。目標は、「2010年グループ売上高1兆円・経常利益1500億円」である。
こんな分析もある。<絶好調ファーストリテイリング 目標売上高1兆円の死角は“ユニクロ以外”>。
http://diamond.jp/series/inside/10_24_001/

ユニクロ事業だけで2010年に7000億まで見えてきたが、残り3000億をその他のブランドでいかに稼ぐかが課題であるとの論である。
確かにファーストリテイリングは傘下の「ジー・ユー」ブランドを大きくテコ入れした。今年に入って990円ジーンズを目玉に、全体にユニクロの1/2~1/3という低価格路線を明確化したのだ。ハイエンドも強化した。1月、「Theory(セオリー)」をTOBによって完全子会社化したのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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