3月も半ばとなる今週、気になるニュースには「価格」にまつわるものが多い。そして、意外なCMが今日の企業の取るべき戦略の方向性を示していた。
さらりと、「時代じゃない?」と流されているが、まさしくそれが今日の真実を表わしているといえないだろうか。消費者が求めているのは、従来以上のコストパフォーマンスであり、明確に価値の向上が売れるための必須条件となってきているのだ。
さすがに現実の企業は「売上げ落ちるかもしれないんだよ」では済まされないので、インサイトは売上げではなく利益率にこだわって、部品の既存車種との共通化や徹底した軽量化などの策を施したという。企業は知恵を絞り、汗をかいて消費者の要請に応えようとしているのだ。
価格と価値のバランスが求められる今日、そのお手本ともいえる戦略を一層加速したのがユニクロを展開するファーストリテイリングだろう。
<「990円」ファストリ自信 激安ジーンズ、ジーユーに投入>
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200903110017a.nwc
ジーユー(g.u.)はユニクロより低価格な衣料を提供するためのブランドとして2006年の発足して以来、イマイチ成長の軌道に乗っていなかった。
その現状打破のために思い切った低価格戦略が打ち出されたのだ。<これまで「ユニクロの3分の2程度の価格帯」を基本戦略としてきたが、ジーンズの990円に代表されるように新たな低価格戦略では、全商品の約8割がユニクロの半値以下になるという>。
中途半端な安さでは、消費者にその価値が響かない。ある意味、ラディカルさが必要なのだ。
そして、「価格を上回る価値」という時代の要請に対し、ファーストリテイリングの柳井社長は明確な戦略を提示している。
<「ユニクロは(全国規模で販売される)ナショナルブランドの商品と比べても品質は高いが、最低価格では提供できない。まあまあの品質で低価格のものを求める人はジーユーでお願いしたい」>
通常は製品の「価値」と「価格」は正比例の関係にある。低価格なものは価値が低く、高価格なものは価値が高い。それを「バリューライン」という。しかし、今日の時代の要請は、「バリューライン上で戦っていたのでは生き残れない」ことを意味している。バリューライン上にあるということは、消費者にとっては「アタリマエ」と映るからだ。
柳井社長の戦略は、「品質は高いが、最低価格では提供できない=ユニクロ」は中価格・高品質という「高価値戦略」。「まあまあの品質で低価格のもの=ジーユー」を低価格・中品質という「グッドバリュー戦略」で展開するということだ。つまり、価格以上の価値を提供せよという消費者からの要請に、低価格でも、中価格でも応えられるようにブランドのポートフォリオを明確に定義したわけだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。