ユニクロが、若い女性向けの商品をそろえた新コンセプトの店舗を、「新宿マルイ カレン」に出店した。その陰にはユニクロと丸井の深い戦略があるように思える。
そのコラボレーションの文脈で考えれば、新宿百貨店戦争の勝ち組、伊勢丹もコラボ上手で知られている。雑誌SPUR(シュプール)と長年「コラボ企画」を展開。入場整理券を発行、毎回完売という成功事例がある。今年も「夢のSPUR百貨店」として、3月10日まで開催されているという。
「ユニクロと伊勢丹で服を買う購入層は価格から考えてかぶらないだろう」と見る向きもあろう。しかし、オシャレ上手な女性にインタビューすると「伊勢丹で目当てのものを買い、スパイスとしてのアイテムはユニクロで安くそろえる」とする層も少なからず存在する。しかし、その逆はあまりない。「ユニクロメインの客は伊勢丹に流れない」のである。つまり、うまくすれば、「伊勢丹が様々なムーブメントを作り、ユニクロ+丸井は、その流れに乗っかって一方的な流入を図る」という図式は少なからず期待するところではないだろうか。
それでも、伊勢丹の底力である大胆に展開したセレクトショップの商品を購入する層と、ユニクロは相容れないと考えるなら、別の客層を見てみるといいだろう。地下2階「イセタン ガール」のフロアは109を卒業した若い女性を狙い、上層階の顧客に育成するための戦略的展開だ。そのフロアに集う顧客層を見ると、あながちユニクロ、特に今回の「ユニクロガールズ」とかぶらないと考える理由はないように思える。109でユニクロ服と併存させている若い女性は多い。そこから卒業して伊勢丹ガールに来てからも、さらにオシャレになったユニクロがそばにあれば、そちらにも足を運ぶことになるだろう。
そう考えると、ユニクロ+丸井=ユニクロガールズの戦略とは以下のようなものになるのではないだろうか。
第一にH&Mとガチンコ勝負。
第二に密かな胸算用として、伊勢丹顧客の若い女性の併用狙い。その顧客を自社に完全にスイッチさせることはできないまでも、伊勢丹シェアをユニクロガールズができるだけ喰う。
第三に従来の伊勢丹客でユニクロ併用のオシャレ上手ユーザーのユニクロ(ユニクロガールズ)利用頻度向上。
07年11月期の売上高は約1兆4500億円、SPA企業としては格上のH&Mに対して、売上高5,855億円のユニクロがガチンコ勝負をチャレンジャーとして挑む。戦いの場として、同じファストファッションという土俵を選び、そのために<ファッションに敏感な若い女性のニーズに応えるため、商品は1カ月ごとに入れ替える>という脱・定番戦略を取り入れる。
一方、チャレンジャーの戦略の基本は「差別化」だが、それはファストファッションでありながら、従来の「高品質」という価値を保てば、十分戦えるはずだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。