『なぜ、シャツをズボンに入れるのか?』ネオ・オタク論っ。

2009.02.23

ライフ・ソーシャル

『なぜ、シャツをズボンに入れるのか?』ネオ・オタク論っ。

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昨年、秋葉原UDX「AKIBA_SQUARE」において旗揚げプレ興行を行ったアキバプロレス。 その興行には、リングアナと観客とのやりとりが、ひとつのお約束となっているらしい。

・・・それは、オタクの「敵」が、ズボンをルーズに穿いたり、シャツをズボンから出していたり、ピアスをしたりするからではないだろうか。

オタクな男の天敵は、親でも教師でもPTAでもACCSでも京都府警でもなく、「チャラ男」(一般的な基準から見てチャラくないかもしれないが、オタクの目にはチャラく写る相手)である。
知識や空想を愛するオタクを馬鹿にし、蔑み、無視し、女の子を奪っていく(とオタクに感じさせる)存在。オタクもまた、チャラ男を馬鹿にし、蔑み、憎み、妬む。奴らは馬鹿で、何も考えておらず、成績も悪いし(なんでこんな簡単なことすらわからないのに生きていけるのだろう!)、チャラチャラしていて、そのくせ自分たちをいじめ、軽んじ、いつも楽しそうにしている。馬鹿な3次元女は自分たちでなくあちらを選んでしまう。奴らさえいなければ、もっとましな青春が送れたかもしれないのに・・・!(ほんとうにそこまで思ってる奴ばかりじゃないと思うが、思ってる奴はいるだろう)

それへの反抗なのではないか。
あるいは、それと同じ位置に自分が「堕ちる」ことへの恐怖なのではないか。
頭の悪い奴と見下している相手と同じ事をしてだらしなく笑う自分を想像して恐怖し嫌悪する。それを遠ざける。自分はそうではないということをアピールしたい から、そいつらと違う服装を律儀に、かたくなに維持する。オシャレをする人がみんな敵ではないけれど、敵はみんなオシャレをしているのだ。必ずしているの だ(なにしろそれが「敵」の定義だから)。

だからオタクはオシャレをしない。単に知らないとか、興味がないとかいうレベルではない。オタクはオシャレを拒絶する。かっこよくなってモテたいという欲求と、奴らと同じ格好はしたくないという反発がせめぎあって、その結果がドライバーグローブであったりバンダナであったりする。あれは、(無意識ではあるが)意図的にファッションを外したオシャレなのだ。故に、必然的に、ダサい。それに共感する人からのみ、格好よく見てもらえる。だから、オタク同士はオタクファッションをダサいと思わない。

オタクはプライドの高い生き物だ。自分が一生懸命やって、なおかつ負けるのに耐えられない。敵の土俵で勝負はしないだけの知恵は持っている(裏返せば軟弱なだけであるが)。だから、敵の土俵であるファッションでは勝負をしない。

僕が昨日感じた恐怖はそれ(の名残)だったのではないかな、と、思った。僕が蔑む相手はみんなズボンをルーズに穿く(ルーズに穿いている相手を無条件で蔑むわけではない。逆は真ではない)。だから僕は、きちっと上までズボンを上げなければならないといつの間にか信じていた。きっとどこかあこがれていながら、でも自分はそれをしたくないというのは、そんな奇妙な反発心なのだと思った。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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