機能性の認知限界を考慮せよ!

2009.02.16

営業・マーケティング

機能性の認知限界を考慮せよ!

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

新商品発売のニュースを見た時、 「そうそう、こんなの欲しかったんだよ・・・!」 と感じる商品がありますよね。 最近こんな声が多く聴かれた商品に、 キングジムの新商品、 デジタルメモ「ポメラ」 があります。


「ポメラ」は、
テキスト入力に機能に特化したデジタルなメモ帳。

スイッチを入れると2秒で起動し、
単4アルカリ電池で約20時間使用できる。

キーボードはノートPCとほぼ同じサイズで
キータイピングもストレスなし。

作成した文章はUSB接続でPCに転送可能。

キーボードをたためば、
文庫本ほどの大きさで370gの軽さ。

「気軽に持ち歩けて、必要な時、
 パッと立ち上げてサクッとメモを取りたい」

「そのテキストデータはPCに移して仕上げたい」

というニーズにジャストフィットした商品だと思います。

私は以前、500gほどの携帯可能な小型ワープロを
利用していたことがあります。

そのワープロはやや大きく厚みがあったため、
バッグに入れると結構かさばりました。

500gでもやはり重く感じましたし、
なにより、キーピッチが小さくてタイピングに
ストレスを感じました。

また、電子手帳もあれこれ試しましたけど、
キータイプはまず無理ですし、手書き入力も面倒。

結局のところ、

外出先等で、デジタルにメモを取りたい、文章を作成したい

というニーズに応える商品は今までなかったんですよね。

私も普段は、ノートPCを我慢して持ち歩いていますが、
簡単な文章作成のためだけにノートPCをわざわざ取り出し、
立ち上げるのはなんともおっくうでした。

しかし、ポメラは、近年のIT技術の進展のおかげで、
上記のような問題点を解消することに成功していますね。

さて、ポメラは一見PCのようではあるけれども、
テキスト入力だけに絞った単機能マシン。

いわゆる「性能破壊型」商品です。

多機能化が進む一般的なPCに背を向け、
意図的に性能(機能)を低下させたアプローチを
採用しています。

こうした性能破壊型商品は、
既存市場のプレーヤーから生まれてくることは
まずありません。

「イノベーションのジレンマ」があるからです。

ポメラの場合も、案の定、
PCメーカーではなく、事務機器メーカーから
誕生してますね。

ポメラの開発に当たってキングジム社内では、

「やっぱりネット接続ができてメールは見れたほうがいい」

などと、既存のPCを前提とした、

「多機能化」

への要請が担当者に寄せられたようです。

新製品開発では、しばしば、
そもそものコンセプトを無視したアイディア、
言い換えると、

「思いつきのお節介な意見・要望」

がとりわけ企業上層部から多く投げられます。

この結果、革新的な商品になるはずだったものが、
平凡なものに落ち着いてしまうことが起きますよね。

次のページ「多機能化への誘惑」

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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