個食化と少人数世帯化に対応するキーワードは「ピッタリ感」

2009.02.10

営業・マーケティング

個食化と少人数世帯化に対応するキーワードは「ピッタリ感」

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

中味は同じ食品。発売元もブランドも全く一緒。295グラムで180円と150グラムで160円。あなたはどちらを選ぶだろうか。

単価計算をするまでもなく、295グラム入りの方がオトクなのは誰でも分かる。しかしあえて、このメーカーは150グラム入りの商品を追加発売するという。
<手作りトマトメニューをおいしく、簡単に!「基本のトマトソース」295g リニューアル~少人数世帯向けの小容量150gレトルトパウチも新登場~ >
http://www.kagome.co.jp/news/2008/090205.html

トマトといえばカゴメというぐらいにトマトにこだわる同社が、<消費者の節約志向による内食回帰を要因に、トマト調味料の市場は、拡大傾向>にあると商機を見てパッケージリニューアルし、拡販を狙っている。それと同時に<少人数世帯向けの小容量タイプを追加することで、トマト調味料市場の更なる拡大>を図るという。

狙いは確かに分かる。しかし、ナゼに単価換算すると全く釣り合わない2つの商品を発売するのかと疑問に想う方も多いだろう。しかし、消費者心理は経済合理性だけでは説明できない部分があることを巧みに見抜いた価格戦略なのだと考えられる。

昨年末のニュースだが、コンビニに関する以下のような記事があった。
<ファミマ、生鮮食品の扱い拡大へ 全店舗の半数で>
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/081228/biz0812280123000-n1.htm

記事では<最近は、スーパーが自転車や車で行ける距離でも、歩いていけるコンビニで少量だけ欲しいというニーズは高齢者や独身者を中心に想像以上に強い>と分析しているが、「少量、使う分だけ買える」という要素もかなり強いはずだ。少人数世帯の進行と共に各自が好きな時に好きなものをバラバラに食べる個食化も進んでいる。買い込んだ材料で大量に料理する習慣は失われつつあるということだろう。

その影響からか、スーパーでは一玉150円でキャベツを売り出すより、半玉150円で売り出した方が売れ行きがいいという現象も起きているという。一体どういうことか。
少人数家庭化、個食化の現状では一玉を使い切るうちにダメにしてしまうことも少なくない。みすみす、自分が代金を投じて購入するものを廃棄するリスクを考えると手を出すのを躊躇する。半玉であれば使い切れそうなので、気軽に購入する。そうした消費者の心理が働くからだ。
半分ダメにするのではなく、三分の二使って、三分の一廃棄すれば一玉の方が特になるのだが、そうした合理性では割り切れないのが人のココロ。トマトソースも半分使って、半分を保存容器に入れるなり、冷凍すればいいのだが、そうした面倒なことはしたくない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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