『お墓めぐり』ブームがキタぁー!

2009.01.02

ライフ・ソーシャル

『お墓めぐり』ブームがキタぁー!

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

中高年層の間で「お墓めぐり」が、人気らしい。都内の霊園を巡って歴史上の人物に想いを馳せる。NHKの大河ドラマ「篤姫」の影響もあるらしいのだが。この人気は、たぶん永続的に続くと思う。『お墓めぐり』は、きっと、現代の日本を救うトレンドになる・・・。

雑誌「WEDGE」の1月号の大人の社会見学というコーナーで「墓地めぐり」が取り上げられている。

その中で東京都内の「青山霊園」のことが記されている。
約80000坪ある広い園内には、14000の墓があり、12000人が眠っているという。
大久保利通に、浜口雄幸に、犬養毅に・・・。
東大農学部教授・上野栄三郎氏の墓の側には、忠犬ハチ公の碑もあるという。
みんなが知っている明治以降の歴史と物語が、そこにはある。

作家の江上剛氏は、その記事を下記のように締めている。
『生前は敵対した者たちも同じ墓地で眠っている。死は誰にも平等に訪れると考えつつ、彼らの様々な思いを想像すると、心は悠久の時の彼方に飛び、自然と癒されていく』。

不景気で、企業の未来に暗雲がたれ込める。
政治的にも、未来が見えない。「出口」が見えない。
こういう時に、人間は、どういう行動をとるのか・・・。
不安定は嫌だから・・・確かなものを求めるために、過去を見つめる。「お墓」には、こういう時代だからこそ求める「確かさ」と「出口」がある。
その行動は、高齢化する人口変動の中で、絶対に定着していく。

「お墓」とは、過去のデータベースが詰まったサーバーのようなものだ。
そこに繋がりにいくことが「お墓めぐり」である。

初七日、四十九日、一回忌に、三回忌・・・・。
死んだ後も、故人との関係を儀式にできる。
その期間に意味や役割を持たせることのできるのが、人間なのだと思う。
人間の理性の本質は、実は、こういうとこにあると思っている。
「死んだらそれでおしまいよっ」じゃない。「過去は、過去じゃん」じゃない。
そんなに人間が刹那的だったら、世の中は、ここまで発展はしていない。

「死」に際して、個人の生きてきたデータベースを詰め込む「お墓」を用意することによって、過去と未来を、永遠に結んでいる。
「お墓」って、凄い発明だと思う。「お墓」なしに、「人間」の幸せな繁栄はなかったと思う。
アナログなサーバーなのだが、
頭と心をフルに活用して、そこから必要な何かを導き出す。
「検索」機能はないが、ストレスにはならない。むしろ、癒される。

ある尊敬する年配の経営者の方に、
人間は「死を引き受ける覚悟ができなければ死ねない」とお聞きした。
「死」とは、人間の苦しみや悩みの究極のもので、誰もが初めて経験すること。
最期は、自分ひとりで引き受けなければならない重い出来事なのだ。

「お墓詣り」の効用は、自分は「必ず死ぬ」ことを日々の中に確信することだ。
「必死」になることの意味を身体で感じることだと思う。
「お墓詣り」の人気が、続くことを心から願う。
そうしたら、日本全体が「必死」になるかもしれない。
「必死」になると、捨てて良いものがわかる。
「死を引き受ける前」にやるべきことがわかる。

前述の作家の江上剛氏の「墓地めぐり」には、次のような一文がある。
「青山霊園で最も名高いのは乃木希典の墓だろう。日露戦争の英雄で、明治天皇の死に夫妻で殉じた。2人仲良く並んで葬られている。墓は、自然石を使い慎ましやかで人柄を偲ばせる。同じ敷地に、日露戦争で戦死した2人の息子の墓が夫妻と向かい合って立っている。国に殉じた一家の歴史に思いを馳せると、厳粛な気持ちになり、背筋が伸びる」と。

不景気が必至と言われる日本で、誰が「必死」になるべきか?
この正月の里帰り・・・父の墓前で、背筋を伸ばして考えてみた。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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